INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 22.03.30

行政と仕事をしていくうえでの基本的な姿勢を教えてもらった半年間でした。

  • 第5期生

株式会社ゲンナイ代表取締役

黒川慎一朗さん

香川県さぬき市出身。都市計画を学んでいた大阪大学在学中、まちづくりに関心を持ち、3年間で国内10カ所以上のまちづくり先進地域を自主視察。まちづくりの一手段として、さぬき市内の祖父母の家の離れを活用したゲストハウス運営を構想する。コロナ禍で大学がオンライン授業となり実家に戻った機会を活かしてリフォームを実行、在学中の2020年7月に株式会社ゲンナイを興し、ゲストハウスをオープンした。2021年3月に大学卒業。ローカルベンチャーラボ受講を経て、コアビジネスをゲストハウス運営から「まちづくり事業」へとシフト。地元事業者によるまちづくり協議会立ち上げに参加、起業型地域おこし協力隊の受け入れを企画するなど、地域での立ち位置を確立しつつある。

まちづくりの一手段として、
現代版港町のような宿泊施設をつくりたいと考えました。

ローカルベンチャーラボに参加する前はどんな活動をしていましたか?

香川県さぬき市の出身です。大阪大学工学部で都市計画を学び、建築とまちづくりに関心を持ちました。地方創生をテーマとした学生団体を設立したり、帰省に合わせて地元企業と大学生との地域貢献イベントを開催したり、また日本各地のまちづくり先進地域を10カ所以上視察したりしてきました。

その中で着想したのが、まちづくりのひとつの手段としてのゲストハウス運営です。さぬき市の実家近くには祖父母の家の離れがあり、そこをリフォームしたらどうかと。さぬき市は港町で、歴史的に人の出入りが活発な場所でした。そこで、移住定住ではなく長期滞在という形で他所から人が常に訪れるような、現代版港町のような宿泊施設をつくりたいと考えたのです。

ちょうど2020年春からコロナ禍で大学がオンライン授業となり、実家に滞在することになったため、その機会を活かしてリフォームを行い、7月に起業。1日1組限定のゲストハウス「まち宿AETE(アエテ)」を開業しました。

会社名の「ゲンナイ」は、さぬき市出身の天才発明家、平賀源内の名前を借りたものです。ゲストハウス事業のほか、耕作放棄地活用のための期間限定水田オーナー体験サービス「田んぼオーナー」制度や、香川大学の学生たちと一緒にプログラミング教室なども運営してきました。

また、2020年秋の「さぬき市津田地区漁業活性化協議会」(以下、「まちづくり協議会」)の立ち上げにも参加し、地元事業者や行政との関係づくりにも試行錯誤しながら取り組んでいました。

宿の田んぼオーナー体験サービスは大人気サービス

2021年6月にローカルベンチャーラボに参加した当初の事業はどんな状態でしたか?

2021年は新型コロナの感染拡大が全国に広がり、事業の主軸であるゲストハウスの売上が大幅に減少しました。大阪など関西圏の緊急事態宣言の影響を直接受けるためです。ただ、もともとゲストハウスは観光シーズンオフの冬期は収入が減少します。そのため、持続性を確保するための事業ポートフォリオの見直しが必要でした。

また、経営ビジョンのひとつに「シビックプライドの向上」を掲げていますが、インパクトを創出するためには具体的な事業や仕組みを検討する必要もありましたし、そのために自分自身のビジョンや価値観を明確化しながら、チームで動ける体制をつくることも重要でした。

受講開始後、事業はどのように変化しましたか?

コロナ禍で人々の移動がますます難しくなったこともあり、もともと将来的に取り組みたいと思っていたまちづくり事業へシフトするために動き始めました。具体的には、まちづくり協議会の活動への注力です。まず、協議会として次の地域おこし協力隊の採用・育成を担いたいと考えました。さぬき市がそれまでに採用した協力隊の定着率が低いことを知ったからです。

そこで、協議会として「起業型」の地域おこし協力隊員を受け入れ、ゲンナイはその中で隊員のキャリア形成および移住サポート(ヨソモノに家を貸したがらないオーナーが多いことから協議会名義で空き家を借りる業務)を担当するという計画を作成し、行政に提案しました。

この提案は無事に通って予算化され、2022年4月から1名、採用から活動支援まで協議会が受託することになりました(4/16現在、募集中。詳細はこちらから)。そのうち採用と研修、活動のコーディネート部分をゲンナイが担います。採用した協力隊員は市内の旧津田町エリアで将来的に飲食店を起業することを条件に、元イタリアンレストラン・現ブックカフェを経営している方に弟子入りしながら独立を目指してもらうことになっています。

起業1年目でまちづくり会社に挑戦できるのか、
疑問や不安がありました。

ローカルベンチャーラボ参加が、宿泊業者からまちづくり会社へとシフトするきっかけになったのですね。

大学時代からエーゼロ株式会社(岡山県西粟倉村など)、株式会社御祓川(石川県七尾市)といった、先進的な地域で活動するまちづくり会社の存在は知っていたし、実際に視察にも行きました。将来的にはゲンナイでもそうした活動をしたいとは思っていましたが、大学卒業したて、起業1年目で挑戦できるのか疑問や不安がありました。なので、まずは宿泊業から始めて行政と関係性を築き、3年くらいたって地域から求められるようになったら動き始めようかと。「待ちの姿勢」だったんですね。

でも、ローカルベンチャーラボで株式会社四万十ドラマの畦地さんの講義を受けて、何をするにも受け身でなく行政や企業に提案していく姿勢に感銘を受けました。そこで、まず人を雇って既存事業の一部を任せ、自分に余白をつくって、とにかく動いてみようと思ったのです。

また、ラボ後半からは熊本県南小国町の株式会社SMO南小国の安部千尋さんのゼミで学ぶことになり、まちづくり会社の経営について具体的な悩みを相談できるようになったため、今こそアクセルを踏めると思いました。

参加には、他にどんなメリットがありましたか?

これまでやってきて、まちづくりというのは実際に取り組んでみないと具体的な情報が得られない世界だと実感しています。まちづくり会社の事業の回し方のノウハウなど、全然表に出てきません。でも、ラボ生という立場ならそうした情報にアクセスできる。特に、国や自治体の制度をうまく活用して事業を作っている団体から、他所では聞けない具体的な話を聞くことができました。

また、私は大学を卒業してすぐ起業したので、相談相手になってくれるような「上司」がいません。地域に同年代の起業家もおらず、壁打ち相手が全然いなかったんです。だから、困ったことを相談できるラボのメンターの存在は、非常に大きな助けになりました。まちづくり会社が行政に対してどう立ち回ったらいいかなど本で調べてもわかりませんし、起業型地域おこし協力隊の制度や事例は知っていても実務は未経験でしたから、そうした経験不足を補う上でもメンターには大いに助けられました。

自分の活動地域外に相談相手ができたことが
安心に繋がっています。

ローカルベンチャーラボに参加してご自身の変化はありましたか?

困ったとき、ちゃんと人に相談できるようになりました。これまでは変に気を使ってしまい、相談がうまくできなかったのです。些細なことに聞こえるかもしれませんが、これは個人的にはとても大きな変化だと感じます。率直に相談できる相手が増えたこと、特に地元以外に相談相手がいることが安心に繋がっています。

また、「実務」というものがどれだけ大変なことなのか、企画を提案している段階ではまったく実感できていませんでした。起業型地域おこし協力隊の提案はめでたく通りましたが、その後におそろしいほどの実務が待っていたんです。行政に提出する資料の修正も何度行ったか分からないくらい。メンターはじめローカルベンチャーラボで知り合った人たちに相談してなんとかクリアしましたが、一人ではとうてい乗り越えられませんでした。

一般企業での実務経験を捨てる代わりに早い時期から地域に入ると決めたのは自分なので、それは自分の弱みとして受け入れて、これからも周囲を頼って相談しまくりながら進めていくしかないと思っています。

最短ルートで地元に戻る、
新しいキャリアの在り方を示してみたいと思っています。

ローカルベンチャーラボ半年間の学びを、これからの事業展開にどうつなげていくか教えてください。

メンターや先輩起業家から、行政と仕事をしていくうえでの基本的な姿勢を教えてもらった半年間でした。特に、行政の予算編成の時期に合わせて複数の提案をしていくことの大切さなどを知りました。今回は起業型地域おこし協力隊の一点突破でしたが、本来は3つくらい手札があると良いとわかり、来年は協力隊に加えて、道の駅の運営など協議会としてできることを提案したいと思っています。

さぬき市は、一大観光地である直島に近畿地方から訪れる際の経由地であり、道の駅は観光客の導線上非常に条件の良い場所にあるのですが、自地域の商品の取り扱いが10%以下になっているなど、課題も少なくありません。道の駅の運営に関われるようになれば、自分の元々の専門である都市計画の知識も活かせると思います。

また、ラボのメンターからは、今回の地域おこし協力隊のケースを「弟子入り型」として市内の他地域にも広めたらどうかとアドバイスいただきました。実はさぬき市は桐下駄の日本有数の産地です。でも職人の後継者不足は深刻で、そうしたところにも今後「弟子入り型」として働きかけられるかもしれません。

現在のところは移住者受け入れの土壌づくりに集中していますが、同時に人の流れの創出にも挑戦してみたいと考えています。先日、うちのゲストハウスに滞在してくれたことのある東京の大学生が、さぬき市の公務員試験を受ける予定だと教えてくれたんです。自分は移住促進を意図していたわけではないのに、予期せぬことが起こるものですね。それがモチベーションとなって、関東・関西の都市圏と連携して学生を受け入れることを考え始めました。

私のように大学卒業してすぐ起業して地域に入る、というキャリアを選ぶ人はまだまだ少数派。でも、同年代から下の世代を見ているとこれから増えていくのではないかと感じます。就職して修業して実績を積んでから、ではなく最短ルートで地元に戻る新しいキャリアの在り方を示してみたいと思っています。

LVLに参加する方へメッセージ

LVLの魅力は、様々な地域で地域に根ざして事業をされてこられた人たちの持つ共有知識・人の繋がりにアクセスできることではないかと思います。 メンター陣の方々の事業選定の条件や、行政との連携における制度の活用方法など、ネットや本では絶対に出てこない内容を知ることができたことは今の事業にも活きています。 地域やまちづくりに興味があるという若い人が取る選択肢として、知識やスキル不足を理由に一度就職して修行してから地域に戻ることが多いですが、LVLがあることで修行部分はLVLで担い、いきなり実践してみるという選択肢が取りやすくなるのではないかと思います。 最後になりますが、LVLをどう積極的に活用できるかで価値は10倍以上違ってくるのではないかと思うので受け身ではなく能動的に参加することをおすすめします。