INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 22.04.08

6ヶ月間で、実現したかった思いをかたちにすることができました。

  • 第5期生

合同会社tangobar 代表社員

関 奈央弥さん

1989年生まれ。京都府京丹後市網野町出身。東京農業大学で栄養学を学び、卒業後は管理栄養士として東京都の小学校で5年間勤務。子どもたちへの食育を実践しながら、いつか地元へ戻りたいと働き方を模索する中で、丹後の食の豊かさに可能性を感じ2016年に季節ごとに丹後の食材とストーリーを味わってもらうイベントを行う「tangobar(丹後バル)」プロジェクトを立ち上げる。2017年に小学校を退職し、京都府にUターン。缶詰の小ロットの商品開発支援をする企業で缶詰の試作や商品開発に携わりながら、本格的に事業としてのtangobarをスタート。2018年に京丹後市の地域おこし協力隊に就任し、丹後の海産物や農産物を使った缶詰などの加工品の商品開発、食育セミナーや食事カウンセリング、米作りプロジェクトなど、協力隊として食にまつわる企画を行いながら、2020年4月に合同会社tangobarを設立した。

協力隊の任期終了を目前にして、
ずっと挑戦したかった事業を形にするため参加しました。

ローカルベンチャーラボに参加する前はどんな活動をしていましたか?

最初のキャリアは、東京都の小学校で子どもたちへの食育を担当する管理栄養士でした。ただ、日本の管理栄養士はキャリアアップが難しくて、いつか地元に戻りたいとも思っていたので、働き方を模索するようになって。

そんな中、知人の紹介でヘルスケアのベンチャー企業で社会人インターンとして働く機会をもらい、そこで出会った人たちのエネルギッシュな姿に感銘を受けて、それから起業に挑戦したいと考えるようになったんです。

最初に事業のヒントになったのは、社会人インターンをした夏に体験した地元京丹後市での漁業体験でした。「命をいただく」という視点で改めて食を意識するようになって、休日に学校給食で扱う食材を作っている農家さんを訪ね生産の背景などを取材して、それを給食の時間や授業で子どもたちに伝えるようになったんです。すると、子どもたちが今まで食べなかった野菜を食べるようになってくれて、作り手や食のストーリーを伝えることに可能性を感じるようになりました。

その夏から継続して丹後の作り手への訪問をしていて、そこで出会った農家さんや漁師さん、丹後の食材にすっかり魅了されてしまって、何人かの仲間たちと一緒に、季節ごとに丹後の食材についてのストーリーを伝えつつ実際に味わってもらうイベントを東京で開催する「tangobar(丹後バル)」プロジェクトをスタートしました。

また、「tangobar」プロジェクトの事業化を模索するためにローカルベンチャーラボを運営するNPO法人ETIC.が主催する社会起業家のスタートアップ支援プログラムに参加して、このプロジェクトの事業化を決意するようになりました。

そうして2017年には、5年間勤めた学校を辞めて、京都にUターンしたんです。ただ、まだまだ「tangobar」だけでは生活が難しかったので、缶詰の小ロットの商品開発支援をする京都の企業に入社して、缶詰を中心とした商品開発を行うブランドで缶詰の試作や商品開発に携わりながら、本格的に事業としての「tangobar」をスタートさせました。

2018年には企業を退職して、京丹後市地域おこし協力隊になり、より地域に入り込んだ形で食の活動をスタートすることができました。丹後の海産物や農産物を使った缶詰などの加工品の商品開発、食育セミナーや食事カウンセリング、米作りプロジェクトなど、協力隊として食にまつわる企画を行いながら、2020年4月には合同会社tangobarを設立したんです。

tangobarで開発した、丹後の食材を活かした缶詰。tangobarECサイトからも購入可能

そのようなタイミングで、どんなことを期待してローカルベンチャーラボへの参加を決めたのでしょう?

2021年夏には協力隊としての任期が終わり、tangobarの収入で生活を支えていくことになっていたので、新しい事業の軸を考えるために参加しました。

当時は食のイベント、缶詰の商品開発を事業のメインにしていたのですが、ずっと丹後の食環境を生かした食育プログラム開発に取り組みたいと思っていて、改めて挑戦したいと考え始めたタイミングでラボの募集を知ったんです。

5年前から地域の生産者さんらと関係性は築いてきたものの、自分1人で動き始めていくことに難しさを感じていて、ローカルベンチャーラボのネットワークを活用したり、メンターからのフィードバックを受けながら事業構想していきたいと考え参加を決めました。

「お客さんの欲しいものをちゃんと売ろうよ」。
メンターからの言葉で、事業への向き合い方が変わっていきました。

ローカルベンチャーラボを通して、新規事業は形になりましたか?

はい! 2022年度には本格的に事業をスタートしようと考えて、ラボ中に試作を始めることを目標に、9月に「食の学校プロジェクト」でクラウドファンディングに挑戦しました。無事に目標額を達成して、12月には第1期「食の学校」を始めることができました。

ここに至るまで、ラボを通して最初に自覚したのは、ぼんやりとこんなプログラムを作りたいと思って参加したものの、どんな人に届けていくのかを具体的に描けていなかったということでした。

それまでは昔の自分のような存在を顧客イメージに置いていて、自分が欲しかったサービスを考えてきました。でも、そうした“自分のような人間”が世の中に具体的にどれくらいいて、丹後ではどれくらいの人たちに提供できるのかということを考えてこなかったんです。

これは、プログラム後半で始まったゼミのキックオフの時間に担当メンターからいただいた視点なのですが、本当にそうだなと納得して、それからは顧客層を明確にしていくことに取り組みました。

顧客層を考えるとき、助けになったローカルベンチャーラボでの学びはありますか?

ラボ生全員に配布された「地域を変える事業のデザイン・シート」ですね。

そこには、「ローカルベンチャーの特徴は、自分、地域、事業のそれぞれが相互に影響しあっていることにあり、これらが分断せず、自分が変わると事業にも変化が生まれ、地域にも影響し、その結果持続可能な地域の実現に貢献する自分の仕事が生み出される」と書かれています。

このシートに取り組む中で、自分軸と事業軸はローカルベンチャーラボ参加前にも意識できていたのですが、地域軸が弱かったなということが分かってきて。

「地域にとって」という視点で考えたら、どういう人たちがこの食育プログラムを通して丹後に関心を持つようになったらいいのか、改めて顧客層を絞り込んでいこうと考えられるようになりました。

また、ラボに参加したことで自分の事業について周囲に伝わりやすいよう整理して語る機会が多くなり、特にゼミの皆さんから様々なフィードバックをいただいたおかげで、振り返ってみれば本当に形がなかったところから一つ新規事業を形にすることができました。この結果は、ローカルベンチャーラボという事業を磨いていく場があったからこそだろうと思っています。

それ以外の事業にとっても、ローカルベンチャーラボは助けになりましたか?

はい。まず現在の収入の軸は、管理栄養士として開発した地域の食材を活かした缶詰商品の売上なのですが、tangobarのECサイト以外だと丹後地域の道の駅や地域のワイナリーさんなどにお土産用として扱っていただいます。

そのため、コロナ禍で観光客の動きが丹後地域に戻った2021年11月ぐらいまで、売上がずっと伸び悩んでいました。10月に営業を頑張って成果は生まれたのですが、初回以降継続した取引がなかった店舗も数店あります。また、ずっと続けてきた食のツアー企画も、緊急事態宣言で2回ほど中止となってしまいました。何とか開催できても、従来のようにとはいかず……。

そんな中、「お客さんの欲しいものをちゃんと売ろうよ」といったゼミでのフィードバックがあって、「食の学校」のターゲット設定もそうですが、商品開発をした缶詰の売り方も変わっていきました。

商品と顧客層の相性の良さという視点から営業戦略を考えられるようになって、すでに取り扱っていただいていた地域のお土産屋さんに加えて、キャンプ場での取り扱いやお歳暮などのギフトとして販売していただく試みを秋口から始めました。

また、ゼミのメンタリング時に「食の学校」に限らずに会社の事業全体の状況をメンターの方に共有したところ、「『食の学校』の構想も大切だけれど、会社の事業全体を考えたとき、今売っているものをもっと売っていって足場を固める時期ではないか」といった指摘をいただいて、既存事業と新規事業への時間配分の見直しなど優先順位を整理することができました。現在は3年ぐらいかけて商品開発事業の足場を固めていこうと、事業のロードマップを描けています。

また、地域に新しく加工場ができる予定になっており、商品開発に取り組める環境が整ってきているので、しっかりとこの期間に売れる商品をつくり、同時に「食の学校」も成長させていくにはどういった組織形態がいいのか、現在は考えを巡らしているところです。

過去に開催された食のツアー企画の風景

「ちゃんと稼ぐ」を意識して、
持続可能な事業をつくるための思考や行動力が身についた半年間でした。

自分自身については、参加したことでの変化は感じていますか?

まず、ちゃんと稼ぐということを意識し始めました。それまでは「これを実現したい!」といった思いばかりが強く、稼ぐということをあまり真剣に考えてこなかったんです。

けれど、メンターをはじめとして「稼ぐ視点もしっかり持たないといけないよ」というお話を様々な方からいただき、地域おこし協力隊の任期が終了したこともあり、事業への意識の持ち方が変わって、既存事業と新規事業の優先順位が変わるなど、具体的な行動も変わっていきました。

事業の今後について考えていること、感じていることをお聞かせください。

「食の学校」に関しては、今は個人のお客様向けになっていますが、2022年以降は行政の方や企業の方向けに提案していく方向にシフトしようと考えています。3年後ぐらいを目処に「食の学校」の収入が現在の売上の軸である商品開発事業と同程度になっていくイメージで、事業づくりに取り組んでいます。

また、ラボを通していろんな地域のプレイヤーと出会えたので、他地域の課題が見えたり、丹後以外の地域でも自分にできることがあるんじゃないかと考えるようにもなりました。ローカルベンチャーラボでできた繋がりで、将来的には「食の学校プロジェクト」を全国展開してみたいとも思っていて。

あとは、地域で酒粕が多く廃棄されている課題があって、酒粕を二次利用した商品開発に現在鋭意取り組んでいます。「食の学校」でも参加された企業や行政の方にこうした地域課題の中から可能性を見い出していただいて、事業に繋げていただくところまでを見据えて参加いただけるプログラムにしていきたいと考えています。

商品開発事業を優先して育てていくという方向は定まったので、これまで全然できていなかった商品の営業に力を入れ、まずは地域の中でしっかり商品を置いてもらえる環境を増やして、さらに京都市内、関西エリアから東京エリアと全国的に販売エリアを広げていくことを目標に取り組んでいきたいと思っています。

自信やスキルが身についた半年間でしたか?

tangobarは食をテーマにしたイベント開催からスタートした会社で、いかに事業を持続的にしていくのかが課題でした。この半年間で、「自分たちが望む取り組みをしつつ、持続的に価値を生んでいくにはどうすればいいのか?」ということに向き合って、顧客目線を意識すること、自分たちの強みを意識して良いプロダクトを作っていくといった基本を実践できるようになって、地域で長期的に価値を生み出し続けられる事業性を考える思考や行動力が育てられたと感じています。

また、役員が1人増え、これまで無償で手伝ってもらっていた妻に謝金を払えるようにもなり、1人では進めることが難しかった部分を進めていけるようになりました!

僕が拠点とする丹後地域は、プレイヤー同士が有機的に繋がっています。実はこれまでローカルベンチャーラボ3期生の起業家と一緒に、彼の団体が開発したビールとtangobarの缶詰を一緒に売ったりもしてきました。

彼の団体からは4期生として1名が送り込まれていて、5期生として僕も続いたので、今後も丹後地域からメンバーを送り込めたらいいねと話したりもしています。ローカルベンチャーラボを通して、地域のプレイヤー同士が繋がり育っていく循環が生まれていったらいいなと思っています。

ありがとうございました!

LVLに参加する方へメッセージ

様々な地域で様々な事業に取り組む、面白い人々と繋がれる場がローカルベンチャーラボです!プログラムの中で、課題に取り組んだり様々な人との対話を行ったりして、事業や自分自身の成長に繋げることができました。全国のフィールドで活躍する面白い方々と繋がれる点もローカルベンチャーラボ の醍醐味です!また新たにローカルベンチャーラボ に参加する皆様とも繋がれることを楽しみにしております!