EVENT/REPORTLOCAL VENTURE LAB 20.04.02

LVLメンターが語る、創業に必要なもの、続けるモチベーションの作り方、ピンチのとき助けになること

LVL3期デモデイ1日目に行われた、地域商社テーマラボのメンター畦地履正さん(株式会社四万十ドラマ)と「関係人口」デザインテーマラボのメンター高砂樹史さん(総務省地域力創造アドバイザー)の対談をレポートします。お二人のこれまでから、ローカルベンチャーの創業に必要なこと、続けるためのモチベーションの作り方、ピンチの際に助けになることについて語っていただきました!

10年間で人口3,000人の町に300人がU I ターン移住という事業創出を経て/「関係人口」デザインテーマラボメンター高砂樹史さん

「関係人口」デザインテーマラボ・メンターの高砂さんは、秋田県を本拠地とするリージョナルシアター「わらび座~田沢湖芸術村」での10年に渡る劇団生活を経て、2005年に長崎県五島列島の小値賀町へ移住しました。きっかけは子どもの誕生で、自給自足の暮らしを子どもたちに与えていきたいと考えたからだそうです。

「島を好きになって縁もゆかりもないまま移住をしてみたら、2050年の日本の先取りをした姿がそこにありました。人口およそ3,000人の小さな島なんですが、高齢化率がおよそ150%。若い人たちは都会へ出ていってしまい出生率が減少、僕が移住するまでの10年間で子どもの人口が6割減少していた地域でした」

「このままでは30〜50年先にはこの島も無人島になってしまう」。そう感じた高砂さんは、島の人たちと話し合い、新たな観光事業創出への取り組みを始めました。

「とはいえ、特に何があるわけでもないんですね。手つかずの自然や昭和の街並み、日本の田舎の自給自足・半農半漁(猟)の暮らしがあって、まずはそうしたものをリアルに体験できるアイランドツーリズムを始めました。10年ぐらいかけて世界中から人々が訪れるような島になり、何よりすごいのは僕が居たおよそ10年間で人口3,000人ほどの町に300人ぐらいがU I ターンで移住してきて、新しい事業が始まったり、漁師や農家の跡継ぎが生まれたりしたことでした」

そうして2008年には、アメリカの高校生との国際交流事業などの取組みが「JTB交流文化賞最優秀賞」「オーライニッポン内閣総理大臣賞」を受賞。また、着地型旅行会社である観光まちづくり公社の立ち上げにも参画することとなった高砂さんは、東洋文化研究家のアレックス・カー氏との連携で江戸末期の古民家などを再生したレストランや宿泊施設を活用する「新しい島旅」事業を展開するなど、日本の観光事業において数々の成果を生み出してきました。

2016年、家庭の事情で奥さんの実家があるという長野県茅野市に移住された高砂さん。DMO(Destination Management Organization:地域と協同して観光地域作りを行う法人)を2年前に立ち上げ、現在では(一社)ちの観光まちづくり推進機構専務理事、長野県DMOアドバイザーなどとして活躍されています。

農協職員から一転、地域資源の価値に目覚め地域商社へ/地域商社テーマラボメンター畦地履正さん

地域商社テーマラボ・メンターの畦地さんは、四万十産の栗を扱った「しまんと地栗」シリーズ、「しまんと新聞ばっぐ」などオリジナル商品開発を多数手掛け、四万十産の栗をふんだんに使ったスイーツが楽しめる「shimantoおちゃくりcafé」を経営する地域商社「株式会社四万十ドラマ」代表取締役です。

「高知県旧十和村(現:四万十町) で生まれ育ち、高校時代は甲子園を目指し熱中した3年間を送りました。そこから先が問題で(笑)、大学に進学するも中退、22歳までアルバイトもせずにプータローをしていて、あるとき困った両親に田舎に連れ戻され、農協で働くことになったんです。その当時の農協は非常に活発で、松茸に天然鮎、天然うなぎという豊富な資源に恵まれていたのですが、その価値に気づけたのはデザイナーの梅原真さんに出会った25歳のときでした。彼は高知県馬路村のぽん酢しょうゆをプロデュースした有名なデザイナーさんで、現在四万十ドラマの多くの商品開発に携わっていただいています」

地域資源の価値に目覚めた畦地さんは、30歳で農協を辞め当時第3セクターであった四万十ドラマに入社(現在は完全民営化)。そのとき社員は畦地さん一人、社長は出資者である近隣市町村から入れ替わり立ち代わりという状態が続いたそうです。最初は地元を知ることからスタートした四万十ドラマでの日々だったそうですが、田舎では当たり前でも都会から見れば素晴らしい価値を持つ人々と出会い、彼らと共に商品開発・販路開拓を25年間続けた結果が現在だと語ります。

「地域商社という名前だけが先走っている昨今ですが、地域商社は地域の資源をただ使えばいいというものではなく、商品開発も加工も自分たちで担い、さらに売る仕組みも自分たちで持たないとダメなんです。そして、その真ん中には『人』がいることが何よりも大切なんですね」

自分の足元を見つめ「真ん中」を見出す

ラボ生たちのデモデイにおける発表を振り返り、畦地さんはこう語ります。

「最初はどうなることかと思いましたが、半年を経て皆さん優秀ですので本当に変わりました。僕はラボ生たちに『真ん中をやりなさい。真ん中が決まらないと枝葉はできないよ』と常々伝えてきたのですが、『真ん中』、つまり自分のやりたいことやビジョンが見えてきたことでコンセプトが生まれ、次の展開が生まれていくという過程を、この半年間で体感してくれたのではと思っています」

高砂さんもこう続けます。

「皆さん半年間の中で『自分』というものをそれぞれ見つけることができたんじゃないのかなと感じました。畦地さんの言葉で言えば『真ん中』ですね。『地域に対して、ローカルという言葉ではなく、そこに確かに人が生きているのだという実感を得られた』とおっしゃっていた方もいらっしゃいましたが、地域には一人ひとり人がいて、たくさんの人生があって、課題と言っても多くの課題があって、その課題はすべてが人に紐付いていることを見つけられたんじゃないのかなと、感動して聞かせていただいていました」

両者共通で語られた「真ん中」や「自分」について、それはどのように見つかっていくものなのかという問いに対し「これは本気になって振り返るしかないんです」と答える畦地さん。

「地域商社テーマラボにも、やろうとしていることの枝葉は見えていても真ん中を長い間見つけられなかった女性がいました。見つけるには振り返ってその瞬間を感じることしかないんですが、彼女の場合はお母さんからの言葉がヒントになって見つかったんです。それは彼女が育った地域で息づいていたある言葉だったのですが、そのように足元を見つめると根っこがあって、それが真ん中になる可能性があると思っています」

本気で地域を良くしたいなら、自分の言葉で語り行動する

また、これから地域での挑戦を始めていく人たちへ向け、高砂さんは「自分自身も30年近く地域と関わっているが、始めることは簡単でも続けるということが特に地域では本当に難しい」と語ります。

「関係人口テーマラボの中でも伝えてきましたが、続けるために自分自身がどう生きたいのか、そして自分が活動する地域が50年後100年後どうありたいのかという二つが重なる部分をしっかり掴みながら、自問自答しながら進んでいってほしいんです。僕自身も特に事業がうまくいかなくなるとそうした部分に立ち返るということを繰り返してきました。そしてその分だけ、自分自身の覚悟が深まり、モチベーションの源泉となったなと感じています」

地域と良い関係性を築くということについて、畦地さんはこう語ります。

「腹の中が本当の意味で見えない相手とは一緒にやろうとは思いませんね。ずっと応援してくれている方は、一番最初に腹を割って話した方ばかりです。一緒にやれるパートナーと一緒にやれる仲間というのはキーワードだと思います」

高砂さんも「同じことだと思うのですが」と言いながら、こう続けます。

「スマホで検索すれば地域の課題にまつわる言葉がたくさん出てきますから、少し調べれば語る言葉は豊富になると思うんです。一方で、発する言葉が本当に自分の言葉かどうかというところが一番大事なんじゃないかと思っています。今日皆さんがプレゼンに共感した方たちというのも、やっぱり自分の言葉で語っている方たちだったのではないでしょうか。

地域の人たちは、言ってみれば課題の多い大変な場所で生きているので、こちらがかける言葉も本気で自分の言葉でないとすぐに見透かされます。特に外から入る人間はそうで、Uターンも色んなしがらみがあるのでその分外から入った方が楽な部分もあるのですが、一挙一動を観察されどういう人間か判断されるのは外から入ってきた人間です。さらに、いくら良いことを言っても地域の草刈りに参加しなかったり消防団に入っていなかったりすれば信頼されませんし、その地域を本当に何とかしたいと思うのであれば、自分の言葉で語り行動することが大事なんだと思います」

ピンチを支えるのは本当の信頼関係、そして未来を見据えられるかどうか

最後に、これから事業を進める中でピンチに陥ったときにどう向き合えばいいのか、何が助けになるのかについて、畦地さんは自身の体験を振り返りながらこう語ります。

「四万十ドラマってピンチの連続なんですよ。5億ぐらいあった売上が道の駅の指定管理を外れ3億5000万くらいに低迷したんです。ただ、本当に涙が出るくらい嬉しかったのですが、道の駅に残る枠15人に誰も希望を出さず社員30名全員が四万十ドラマについてきてくれたんですね。ですから皆の仕事を作らなきゃいけなくて、そのときは電話をかけまくるしかなく、自分たちがどんなネットワークを作ってきたかを実感するということがありました。全国の皆さん、そして地域の一緒にやってきた仲間から助けていただいたのですが、それは25年間続けてきた僕らの力であり、それを忘れたら地域でやっていけないんですよね。この人たちと一緒にやっていくんだという本当の信頼関係を作ることが、ピンチに立ち向かう際には必要なのだと思います」

一方で高砂さんは、こう続けます。

「ローカルビジネスというのは右肩上りには全くならないんですね。低迷の時代があって、あるとき照明が変わりグッと上がっていくというのがこれまで色んな事業を見てきて感じていることです。大事なのはこの低迷期に先のイメージが見えるかどうか。当然そうしたときには協力者は少ないです。でも、島が提供する暮らしの価値は体験してもらえれば本当に分かってもらえるという確信はあったし、活動を始めた当初から理事会でターゲットは世界だと公言していましたし、皆に笑われましたけど売上目標も最初から1億円と言っていました。地域の価値を磨いて商品にできる、必ず評価されるという確信・イメージが持てるかどうか、5年後、10年後、20年後が見据えられるかというところが続けるモチベーションとして本当に大事なのかなと思います」

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