EVENT/REPORTLOCAL VENTURE LAB 21.10.06

ローカルベンチャーラボ第5期「事業構想基礎講座」開催

開講式からおよそ4ヶ月、ラボ生たちはどのような視点で事業構想を進めてきたのでしょうか。今回は、6月に開催された「事業構想基礎講座」の一部をお届けいたします。

周囲に理解されないことこそ、自分が始める意味がある。そんな創業期を支える仲間づくりとは

講師は、ローカルベンチャーラボ第5期のメンターであり、学び合いの場づくりや課題解決のための新規事業創出を支援してきたエンパブリック株式会社代表・広石 拓司(ひろいし・たくじ)さん。ZOOMのチャット機能で続々と集まるラボ生たちからの質問に答えながら、講義は進んでいきます。

「地域コミュニティとはどのような距離感で付き合うのが適切なのか」といった相談に対し、「地域にどっぷり浸かるよりも、地域外にコミュニティを持つことがとても大事」と答える広石さん。

「新しいことをしたいのに地域の既存の論理に飲み込まれてしまうと、動けなくなってしまいます。地域の人たちを尊重し、求めに応じながらも、一方で自分の論理を守ることが求められてきます。『周囲がわかってくれない』という言葉もよく耳にしますが、もしわかる人が他にいるなら、それはあなたがやる意味がないことですよね」と、動く前に合意形成を考えすぎると新規性が失われていくのだと語ります。

また、起業するときの仲間づくりのポイントについて、「大事なのは結果を出してから会える人と、一番最初に出会う人は違うということ」だと続ける広石さん。

「最初の仲間は結果が出ない自分でも付き合ってくれるし、失敗しても付き合ってくれます。一定以上の成果を出さないと誰も一緒にやってくれないんじゃないかと不安に思う気持ちはわかりますが、失敗しても付き合ってくれる仲間はどうやったらできるのかを考えてほしい」と続けます。

実はエンパブリック起業前、2004〜2008年まで社会起業家支援団体であるNPO法人ETIC.(エティック)で働いていた広石さん。

社会起業家支援を続ける中で、身近な課題に気付いて動こうとする人は多いものの、自分ひとりの力で何とかしようとするとうまくいかないことに気づいたといいます。そこから、「周囲の力を活かして新しい仕事が生まれていく関係性づくり」をテーマにエンパブリックを創業されたのだと語りました。

地域での新規事業は住民との「対話」から生まれる

地域では、住民がすでに自覚している課題は対応済みです。一方で、解決したいけれど実現
が難しいことは取り残され、地域課題になっています。

そんな地域で新しい仕事をつくるためには、課題解決ではなく、住民の潜在的なニーズを見つけ出すことが必要だと広石さんは語ります。

潜在ニーズとは、顧客ヒアリングして見出せるものではなく、目の前にサービスや商品があって初めて「そうそう、こういうものが前からほしかった」と言われるもの。「地域に飛び出して対話することでしか見い出す方法はない」と広石さんは語ります。

また、企業のCSVの観点からみても、地域課題はビジネスにならないけれど潜在ニーズを見出せればビジネスになると続ける広石さん。

企業の技術力を地域側に伝えるだけではビジネスは生まれないけれど、地域住民と対話をする中で潜在ニーズが見出されれば、そこに技術を掛け合わせて新規事業が生まれるのだと語ります。

「説明をしなくても最初から地域が応援してくれることなんてないわけです。そこに大変さを感じる気持ちもわかるのですが、『そうか、もっとコミュニケーションが必要なのか』と発想を転換してほしいんですね。そうして対話が生まれることで、地域の側も自分たちだけでは生まれなかったアイデアが出てきて、それが事業になるのだと思っています」

実現したい未来のために、必要な出会いが生まれる「仕組み」をつくる

そうして生まれた事業構想を実際に動かそうとしたとき、ポイントになるのは「社会資源をどう活かしていくのか」だと広石さんは語ります。

「自分が何ができるのかも大事ですが、自分以上にそれが得意で上手に課題を解決できる人や企業、使われていない資源がたくさんあるはずです。そうした社会資源と地域をどう結びつけるのかを、ぜひ皆さんには考えてみてほしいんです。

それは皆さんの存在は必要ないという意味ではなくて、『自分が実現したい未来のために、困っている人たちがこういうものと出会えたらいいのに』という考え方で、理想的な出会いとつながりを生み出す役割を担ってほしいということです。

個人ベースでのつながりや、イベント的な場を介してのつながりにどうしてもなりがちなので、ぜひ皆さんにはそこから脱して、つながりが価値を生み出すような仕組みをつくってほしいと思っています」

例えば今まで自分が稼ぐためだけにITベンチャーを経営してきたような人が、「実は ITを活用すれば社会に貢献できて、それはとても楽しいことなんですよ」と自分の新しい役割を認識するような多くの「新結合」を生み出して、定着させていくことをイメージしてほしいと広石さんは語ります。

「ですから、皆さんに考えてほしいのは、イノベーションとは結び付けていくものだということで、その中で周囲が変わっていく姿を描くのが『ビジョンをつくる』ということなのだと思っています」

時代性を見つめて、戦略的に事業を構想する

地方創生においてSDGsが重要視されている現在、脱炭素化の流れを意識すること、ビジネスセクターで進むDX化を意識することが、地域と企業との協働の鍵になるだろうと広石さんは予測します。

「デジタルが深く組み込まれた、持続可能な新しい経済社会の形をつくる流れが加速しています。そうした大きな社会の変化の中で、これから何が起きるのかという視座でも戦略的に事業を考えてほしいと思っています」

自分たちの考えている価値観と、既存の地域や企業の価値観はどこがどう違うのかを丁寧にあぶり出し、これからの変化の時代にどうコミュニケーションしていけばいいのかを考えることで突破口はつくられると、広石さんは語ります。

「事業企画ではなく、構想、つまり大きなことをまず考えてほしいんです。そうした大きなことは、地域での暮らしに具体的にどう落とし込めるのか、自分は何ができるのか、何と何をつなげたらいいのか、そうした順序で考えてみてください」

相互理解を通して信頼を築きながら、小さく成果を積み重ねる

最後に、コミュニケーションをするうえで大切にしてほしいのは、「観察」だと語る広石さん。

自分の思い込み・判断を取り除いて相手がなぜそう考えるのかを観察することで、自分と考え方の違う地域の人たちと共感しあっていけるのだと語ります。

「観察と対話からアイデアが生まれたら、まずは小さく試してみてください。それを繰り返しながら、やっと事業化していけるんです。慌てて事業にする必要はなくて、コミュニケーションを積み重ねながら形にしていくんです。

文化が違う人同士、まずは相手の話を聞くことから始まります。その次に自分の考えを伝えて、相互理解しながら信頼を構築いていきます。でも、信頼なんて一朝一夕では生まれません。まずは『どうやら悪い人ではないようだ』くらいに思ってもらって、そこから『少し一緒にできることはありませんか?』と小さく一緒に動き始めてみて、お互いへの理解が深まっていきます」

そうした時間を積み重ねて成果は生まれていくのだと語り、講義を終えました。

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