EVENT/REPORT 19.11.30

LVサミット2019レポート「MOBILITY MEETS COMMUNITY ~地域の移動・モビリティの問題を考える」

11月8日(金)、東京・神田で「ローカルベンチャーサミット2019」が開催されました。主催はLVL設立者であるローカルベンチャー協議会です。

「新たな事業創出、自治体×企業連携のための作戦会議」とサブタイトルが付けられたこのイベントは、地方自治体との連携で新しい可能性を模索する都市部企業と、民間の力を地域活性化に生かしたい自治体が出会い、地方に新たな事業を創出するための戦略を共に考える場として企画されたもの。3度目の開催となる2019年は、主催団体である「ローカルベンチャー協議会」の参画自治体に加えて、今後の参画を検討する約20の自治体が参加。今年度から共催に環境省や一般社団法人シェアリングエコノミー協会が加わったことでそれぞれのつながりがある企業への呼びかけも行われ、300名を超える参加者が会場に集いました。

▷前日の記者会見や当日のオープニングトークなどの詳細はこちらの記事から

オープニングトークに続く18もの分科会は、LV協議会を構成する12のメンバー自治体がテーマを設定し企画運営を担当したもの。テーマは地域ごとの特徴や重点施策の多様性を反映し、地域おこし企業人/協力隊の活用、再生エネルギー、ふるさと納税の活用法、教育、防災、不動産、アート、地域福祉から、事業承継、兼業・副業など多岐に渡りました。

今回はLVL3期生でもあるマドラー株式会社代表取締役 成田智哉さんが登壇された分科会「MOBILITY MEETS COMMUNITY ~地域の移動・モビリティの問題を考える」のレポートをお届けします!

<登壇者>
マドラー株式会社代表取締役 成田智哉氏
ヤマハ発動機株式会社先進技術本部NV事業統括NV企画部企画Gr. 星野亮介氏
一般社団法人日本カーシェアリング協会代表理事 吉澤武彦氏

コミュニティの入り口としてのライドシェアを/マドラー株式会社代表取締役 成田智哉さん

まずは登壇者それぞれの活動報告から。

1988年北海道生まれ、東京大学卒業後「民間企業で世界平和に貢献する」という目標をもってトヨタ自動車株式会社に入社した成田さん。人事部門で5年間仕事に励み、2018年にはブラジル支社に赴任。赴任中に企業で雇われて働くことに違和感を感じ、新しいチャレンジを求め4か月で退社を決意。2019年春、北海道厚真町のローカルベンチャースクールに参加し、5月には厚真町をフィールドにしたライドシェアサービスを提供するマドラー株式会社を設立しました。

「マドラー」という社名の由来は、社会の様々なセクターを越境しかき混ぜ結びつけていくビジネスを始めたいという想いにあると成田さんは語ります。

中央にいるのはマドラー犬なのだそう

「厚真町は山手線内側面積の約6.7倍にもなる町です。JR北海道が抱える経営課題も含めその広大な町内における公共交通機関が限界を迎えている中、その問題をライドシェアで解決することはできないかと模索しています。

一方で、ライドシェアは単純な移動の切り売りではなく、若者とベテラン、外の人と中の人のコミュニティが生まれていく出会いの場にもなり得るのではないかと感じています。観光においても、スタンプラリー的な観光ではなく、地元の人と交流する入り口にライドシェアはなってくれるのではないかと思っています」

現在そのサービスの詳細は調整中とのことですが、北海道大学の学生が厚真町にボランテイアに訪ねた際、地元の方とのマッチングを実験しその手応えを感じてきたと語ります。

「今後は例えばナースの方と連携してコミュニティナースの取り組みに活かしていったり、郵便局と協働するなど、より大きなインフラを作るためのサービスに挑戦していきたいと思っています」

現在は実証実験を行いサービスの質向上をねらいながら、法律にも一つひとつ対応を進めていると語る成田さん。今後の成長もLVLではお届けしていきたいと思っています。

▷現在、マドラー株式会社は実証実験を開始しました(詳細はこちら

寄付車で持続可能な共助の社会を/一般社団法人日本カーシェアリング協会代表理事 吉澤武彦さん

次の登壇者は、一般社団法人日本カーシェアリング協会代表理事の吉澤武彦さんです。

東日本大震災で約6万台の車が被災した宮城県石巻市で、全国から寄付された車を使った助け合いから生まれた「⼀般社団法⼈ ⽇本カーシェアリング協会(以下、カーシェアリング協会)」。一時の支え合いではなく持続的な支え合いの仕組みにしていこうと、災害時車で困らない地域をつくるために現在も活動を続けています。

自立再建できる若者は去り交通弱者の高齢者ばかりが残った復興公営住宅で、コミュニティを再建するためにカーシェアリングを活用しているのだと語る吉澤さん。乗り合いでの買い物、個別の外出、皆での旅行、お茶っこ(東北のサロン)への参加など、その利用方法は柔軟で様々。ルールはお茶っこで決め、ドライバーはご近所さん、かかった経費は実費を平等に分担する仕組みで現在では毎月10名前後メンバー増えるという盛況ぶりです。平均年齢は75歳、日本最高齢のカーシェアリングサービスだと吉澤さんは笑います。

現在、復興の文脈ではなくなってきている一方で、高齢者の免許返納がカーシェアの存在でスムーズに進んだりと、地域の共助の仕組みとして確実に定着しつつあるコミュニティ・カーシェアリング。

「石巻で8年間実施しその仕組みが整備されてきたため、1年前から他地域へのノウハウ移転を始めました。滋賀県大津市とは協定を締結し、カーシェア普及に向けて協働しています」

また、こうした共助の社会を作るための活動だけでなく、人口減少地域の商店、経済的困窮者、NPO・移住・起業、離島の移動手段をバックアップする取り組み、そして災害時に車で困らない社会を作るための取り組みを進めているカーシェアリング協会。熊本地震では73件、岩手県豪雨では23件、九州北部豪雨では41件、西日本豪雨では629件の支援を、九州豪雨支援・台風15号支援においても現在活動中で、台風19号支援も開始したと続けます。

「今度は東日本大震災時に受けた支援を日本中にお返しできるように活動している」と、吉澤さんは発表を締めくくりました。

▷現在、日本カーシェアリング協会は台風19号の緊急支援のためのクラウドファンディングを実施しています!(詳細はこちら

電動小型低速車で地域の笑顔をつくる/ヤマハ発動機株式会社 星野亮介さん

最後の発表者はヤマハ発動機株式会社 星野亮介さんです。

新規事業開発の中で、ゴルフカートをベースにゴルフ場以外の用途を開拓しようと開発された電動小型低速車の担当している星野さん。2014年ごろから本格的に販売が開始された同車は、現在ではリゾートホテルやテーマパーク、結婚式場やスタジアムに導入され、国内販売台数はおよそ250台/年。国内シェアの8割を占めるといいます。今回は、そんな電動小型低速車における公道エリアの社会実装例について語ってくれました。

島根県松江市の社会福祉法人では高齢者施設の送迎に利用され、石川県輪島市では地域住民や観光客の移動手段として運用。男性の高齢者に役割を与える効果で、引きこもり防止にも一役買っているのだそうです。広島県福山市のアサヒタクシーでは瀬戸内の海岸線で入り組んだ道を観光する際に利用され、多くのドライバーから「開放感がありお客様と会話が弾む。仕事が楽しい」というフィードバックを受け、社長自ら車両を購入するまでに至ったそう。大分県姫島では、離島での観光ツーリズムに活用。当初は移動手段だったライドシェアが、今ではコミュニケーションツールになっていると語ります。

また島根県雲南市におけるライドシェアの実証実験では、竹中工務店と協働し乗車中の人々の笑顔度を図るプロジェクトを実施しています。市バスが廃止された区間での実証実験はタクシー業者とのバッテイングが懸念されましたが、「街に笑顔を増やす」という共通のビジョンを描くことでタクシー業者を巻き込み協働を実現させたのだと語ってくれました。

▷ヤマハ発動機株式会社は12月までの実証実験を終え(詳細はこちら)、雲南市民へ進捗が報告されました(詳細はこちら)。

ライドシェアにかける希望

▷ライドシェアはコミュニケーションが生まれる場

それぞれの活動報告を受け、登壇者全員によるディスカッションへと移ります。

「タクシーは一分一秒を削るために乗る場合が多いですが、ライドシェアの価値としてコミュニケーションが鍵になるのかなと思いました」と成田さん。

吉澤さんも「高齢の利用者が多く、せかせかしていないという点が今日の発表で共通していましたね。あとは僕らもお出かけするときには話が尽きないくらい盛り上がるので、そうした傾向はどこも同じなんだなと思いました」と続け、「そういえば仮設住宅におけるコミュニティづくりに苦労していた石巻市役所の職員らから、カーシェアリングを通して作られた私たちのコミュニティの活発さに驚かれたことがある」と笑いました。

「世間話が生まれて色んな活動のきっかけになるんですよね。あとは仕事を引退した男性がドライバーとしての役割を得てやる気になる現象が起きています。おばあさんに笑顔でありがとうと言われたら、まんざらでもない気持ちになるみたいです(笑)」

▷既得権益とは協働できる

一方で、タクシーやバスなど既存事業者が存在するこの業界において、そうした兼ね合いはどうクリアしているのかと成田さんは2人に問います。

吉澤さんは、「僕らはあまり対立していないです。カーシェアはボランタリーなのでサービスの完成度は低く、あくまで補足の立ち位置なんですよ。事前予約が必要なので、タクシーを使う人は相変わらずタクシーですし、バスが使える人はバスを使います。でもそれらではどうしようもないとき、地域の人が迎えに来てくれるだけで利便性がグッと上がって高齢者の外出頻度は上がるんです。地域によってはタクシー会社の連絡先をカーシェアの車に置いているところもありますよ」と語ります。

成田さんも「地域密着型のタクシー事業者こそ、地域を救いたいのだと伝えれば協働できる」と続けると、星野さんも完全に同意だといいます。

「地域密着のタクシー業者さんにとって地域の先細りは致命傷です。我々も今回狙いが利益追及型ではなかったという点もあったかと思いますが、最初は机を叩く勢いで反対されましたが最終的には非常にアドバイスをいただけました。住民が困っているのであって、利益を得るのは我々でも役所でもないということが伝わればいいのだと思います」

▷MaaSとライドシェア

最後に会場から、最近話題になっているMaaS(Mobility as a Service :マース)――ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず自家用車以外のすべての交通手段による移動を一つのサービスとしてシームレスにつなぐ新たな移動の概念――について、ライドシェアとの関係をどう捉えているかという質問がありました。

成田さんは「MaaSの利便性は、本当に実現したい社会を実現する一つのきっかけになるのでは」と語り、吉澤さんもそれに同意した上で「一方で、利便性よりもコミュニティの力を活かした方が、モビリティの問題自体は解決するのではないかと感じている」と続けます。星野さんも「全ての人が自分の意思で移動できる社会にしたい」と語りました。

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