INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 21.04.21

自分の「好き」と「得意」を活かした事業づくりができるようになりました

  • 第4期生

※今回は特別に、林業をテーマに島根県雲南市で共同プロジェクトを始めた4期生の2人を同時にインタビューしています。

舩木 海さん(写真右)、吉田 城治さん(写真左)

舩木 海(ふなき かい):島根県松江市出身、現在は雲南市に在住。松江農林高校、島根県立農林大学校林業科を卒業し、林業事業体造林班で5年間勤務。現在はフリーランスの木こりとして山林活用イベント等を運営している。/吉田 城治(よしだ じょうじ):静岡県生まれ。環境コンサル、林業関連団体等を経て、現在はITベンダーのソリューションエンジニアとして林業を中心に行政のDX化を推進中。

活動拠点となる地域、新しい視点をもらえるメンターとの出会いを求めて。

参加前はどのような活動をされていたのでしょうか。また、どのようにLVLと出会われたのでしょうか。

吉田さん(以下、敬称略):環境コンサルなどを経て林業関連団体に勤めるようになり、全国の森林・林業のコンサルティングを7年間経験しました。現在はITベンダーに所属し、森林・林業分野におけるICT支援を行っています。

LVLに出会ったのは、NPO法人ETIC.が事務局として運営している東京都のビジネスプランコンテンストTOKYO STARTUP GATEWAYに参加したことがきっかけでした。

消費者が自ら、デザイナーと素材、職人をマッチングして作る国産材デザイン・トイの制作・販売サービスのビジネスプランを構想してセミファイナリストに選出されたのですが、そのプランをどうにか形にしたいとETIC.が運営する関連プログラムに参加させていただく中で、LVLを紹介してもらったんです。

舩木さん(以下、敬称略):僕は20歳から5年ほど地元の林業事業体で働いていたのですが、2年前に退職して現在はフリーランスの木こりとして働いています。大学生の頃から個人として活動していきたいという思いがあり、事業体へは山仕事のスキルをしっかり身につけたいと思って就職しました。

現在活動の拠点にしている島根県雲南市には5年ほど前から縁があって、退職後に移住しました。

LVLに参加したのは、雲南市のNPO法人おっちらぼ代表理事であり、4期メンターだった小俣さんから誘われたことがきっかけでした。コロナ禍で全面オンライン開催になったこともあり、それならば参加できるかなと思い参加を決めました。

山仕事中の舩木さん

LVLにどのようなことを期待していましたか?

吉田:東京で働いていると、実際にフィールドにする地域や森林を見つけることがとても難しかったんです。LVLを通してそうした地域と出会うことができたらと思っていました。

舩木:漠然とではあったのですが、やりたいことは色々と決まっていたので、実現するための骨組みを作ってみたいと思っていました。

また、雲南市はチャレンジする人に優しい土壌なので、こんなことをしたいと周囲に伝えると、だいたい「いいじゃん!」と前向きに応えてくれます。とてもありがたいことなのですが、逆にそれに不安を感じてしまう自分もいて(苦笑)。

色んな人の活動の話を聞いたり、メンターの方から痛いところを突かれたりしながら、プランを練り直してみたいと思っていました。

手探りの中、自分らしく動いていくための判断軸と考え方を学べた半年間。

4期はオンライン開催で、前半はインプット編として8つのテーマを横断した講義を受講していただきましたが、この期間の学びはどのようなものでしたか?

吉田:これまで考えてこなかったような視点、深堀りできていなかった部分について、実践してきた方たちの経験談を通して学ぶことができたので、とても参考になりました。後半、自分の事業を考え形にしていくときには、前半で得た学びが基礎となって支えてくれたなと思います。

また、そのときは理解できた気になって聞いていたのですが、後々実際に自分で動き出してみてはじめて本当の意味や価値が分かるようになったなと感じます。

たとえば、「このやり方はあのとき聞いたやり方だ!」と気付いたとき、それを適用することができたというよりも、「これまでやっていたやり方でいいのだ」と肯定されたような気持ちになれたことがありがたかったですね。

舩木:それぞれの事業内容のお話も面白かったのですが、個人的には人によってアプローチの仕方が“真逆”だったりすることに関心を持ちました。

誰かをサポートする目的で始めた人、自分がしたいことを始めたけれど結果的に誰かが助かっている人、皆さんやっていらっしゃることは似通っていても、考え方のスタートがまったく違ったんですよね。

僕はこれまで「誰かのため」をスタート地点に置かないといけないと思い込んでいたのですが、一方で自分はその方法ではどうしても頑張りきれないなと感じていて。

「まずは自分が何がしたくて、それがたまたま誰の役に立つんだろう」と考え方を変えることができたことで、自分らしい動き方ができるようになったと思っています。

誰のためにならなくても、自分の楽しさのために動くことを肯定できるように。

後半はテーマ別の学びでしたが、どのテーマを選ばれましたか? また、そこで得た学びはどのようなものだったでしょうか。

吉田:僕はエリアブランディング&マネジメントテーマラボを選びました。もともとは別のテーマラボを検討していたのですが、バーチャルフィールドワークの研究プロジェクトに参加して(※ 選抜メンバーによる任意参加のプロジェクト。詳細はこちらから)、厳しいメンター陣のもとで必死でプランを練っている同期生を見て、このテーマラボで学べたら面白そうだなと変更することにしたんです。

エリアブランディング&マネジメントテーマラボで学んだ多角的なまちの見方は、これまで考えたこともなかった視点ばかりで、森にアプローチする際に絶対に重要になってくると感じています。

また、メンタリングではだいぶコテンパンにやられまして(笑)、改めてしっかり考えなきゃだめだなと引き締められました。

エリアブランディングの基本は最初から口酸っぱく言われてきたので、頭では理解できていたつもりだったのですが、実際にやろうとすると先入観で見逃してしまう部分がたくさんあって。メンターに指摘されて初めて、自分が見逃していた大事な情報に気づく場面がたくさんあったんです。

このコロナ禍で中々アウトプットできずにいるのですが、ここでの学びをどう事業に活かしていけるかメンバーと現在も試行錯誤中です。

フィールドにしている南高尾で、エリアブランディングのためのフィールドワークを実施。地域の課題と魅力を発見

舩木:僕は土着型SDGsテーマを選択しました。初回、メンターの広石拓司さんに自分が取り組みたいことを伝えたら、「それは誰かの役に立つからやるのか、それとも誰の役にも立たなくてもやるのか?」と聞かれたんですよね。

「多分誰の役に立たなくてもやります」と答えたら、「その気持ちをベースにした方が多分面白いことをできると思うよ」と返されて、自分はこのまま進んでいいのだと思えました。このやりとりが今振り返ってみても一番印象に残っています。

正直、そのときは「誰も助からないならやらない方がいいのか」というジレンマに陥っていたんですよ。

吉田:それ、分かりますよ。林業など森林に関わる事業は採算性が難しい、と諦めてしまっている人たちが多いんですよね。

僕は、森林・林業という産業を諦めたくないという気持ちが強く、「自分が楽しくやれるならそれでいい」とは割り切れなかった部分があったのですが、舩木さんらと一緒に活動を始めて「むしろ楽しくあることが大事なのだ」と肯定できるようになりました。

そう思い合える仲間を見つけられたことは、LVLに参加して得たものの中でもとても価値あるものだと思っています。

舩木:吉田さんたちとイベント企画の相談をするとき、誰にアプローチして助けるみたいな話がもうほぼ出てこないですもんね。「それ面白そうじゃないですか!」だけで続く2時間(笑)。

僕もこう思えるようになるまではきれいなゴールをずっと作ろうとしていて、これをすれば山仕事をする人が増えるだとか、山が助かるといったことを言い続けていました。

確かに周囲からの賛同を得やすかったですし、行政の人ともうまくコミュニケーションをとれるだろうと思ったのですが、いまの方が自分らしいと感じますし、何より楽しいです。

研究プロジェクトでつながり、雲南市を拠点に2人でプロジェクトをスタート。

4期から新たに選抜メンバーによる研究プロジェクトがスタートしました。お2人はソーシャルビジネスの研究プロジェクトに参加されていたそうですが、どのような経験をされたのでしょうか。

舩木:これまでも話してきましたが、必要とされる考え方が僕に向いていなかったせいか、途中までは本当に苦しかったですね。

誰が助かる人で、どんなアプローチをしてといったシートを書く宿題があったのですが、それがまるで進まなくて。なんとか形にはしましたが、最後まで違和感として残った感じです。

ただ、僕にはそうした考え方はやっぱり向いていないんだなとはっきり分かって、そこはよかったと思っていますし、研究プロジェクトをきっかけに雲南市にやってきた同期生、吉田さんらとも出会うことができたので、それはよかったなと思っています。

また、今も雲南をフィールドにはしていますが、最初から行政の方たちと一緒に動くことを目的とする考え方は捨てて、まず自分がやってそれをおもしろいと感じてくださったら乗っかってもらってOKという考え方に変えることもできました。

吉田:僕の場合はまず雲南市と繋がりたいという気持ちが強かったので、参加すること自体に意味がありました。

メンターの小俣さんの存在に惹かれて、こういう人がいるところだったら何かできそうだなと思っていたんです。そこから実際に雲南市に伺って、土地の空気感が自分に合うなと感じて、より一層この土地で縁をつくりたいと思うようになりました。

今回研究プロジェクトを通してつながりをつくることができましたし、自分のやりたいことと似ているのかもしれないと思えた先輩起業家と出会うこともできて、いい時間だったと思っています。

雲南市で、舩木さんと吉田さんが一緒に企画したイベントでの一枚

ずっと隠してきた本当の夢を、自分の軸として周囲に語れるように。

LVLで最終発表したプランを教えてください。

吉田:人や自然との繋がりが希薄な都会的生活に味気なさを感じている人たちへ向けた、自分らしく穏やかで文化的なライフスタイルを送ることができる森づくり事業のプロジェクト「RINQ.」を発表しました。

リモートでも参加できる森づくりプラットフォームとして、全国の方に楽しんでいただける事業を目指しています。

舩木:実は僕は、小学生のころからの夢『仮面ライダー響鬼』になりたいという想いを叶えるために、林業に携わるようになりました。

ただ、これまではそのことは周囲に隠していて、テーマラボのメンターである麻生 翼さんとのメンタリングを繰り返すうちに、本当は小学生の頃から心の中でずっと大事にしてきたこの気持ちを公言していいんだ、むしろそれを自分の軸として伝えていった方がいいのだと思えるようになりました。

この気持ちを理解して一緒に面白がってくれる人がこんなにいるのだと分かって、隠していて損だったなと。最終発表の場でも堂々とこの気持ちを軸にしたプランを発表することができました。

自分の好き&得意な分野に林業を持ち込んで、スキルを活かした挑戦をしていきたい

最後に、今取り組んでいることや、今後取り組みたいことについてお聞かせください。

舩木:ありがたい話なのですが、2020年は仕事が予想以上に増えてしまって、1人では対応しきれない場面が多くありました。そこでコロナ禍で仕事が減って時間ができた人たちに週に2回だけ、または月に1回だけの草刈りの手伝いをお願いしてみたところ、毎日仕事でするのは無理でも、たまにやると気持ちがいいという人たちが現れ出したんです。

それぞれが心地良いペースを維持して参加できる仕組みにしたら、結果的に山林整備の担い手が増えるんじゃないかと考えて、LVLの後半はその試行錯誤を続けてきました。

現在は、そこから自分の好きな要素をどんどん加えていって、山林整備を仕事としてするチーム、仕事ではなく遊びとしてやろうというチームを試験的に作っているところです。

自分がしてほしいことをイベント的に提供しながら、みんながやりたい/知りたくて、僕が実現できる/教えられることは何だろうとか、この体験に何円支払ってくれるんだろうということを試していて、2021年の春から遊びメインの『フナキノジカン』、整備メインの『WOOD SHIP』を活動としてスタートしました。



吉田:現在はプロジェクトをいくつか準備しているような状況です。ただ、LVLに参加するまでは、木1本の価値を高めてしっかりしたビジネスにしていかなければという気持ちがとても強かったのですが、今は自分が楽しいと思えることを突き詰めていきたいと思うようになりました。

純粋に森林の可能性を探究していきたいとも感じていて、たとえば他の人が持ってるアイデアを事業化する手伝いをしたり、アイデアを試せるような場所を作ったり、「林業×スポーツ」のようにあまり林業と結び付かないような観点からも事業を考えてみたいと思っています。

以前は林業やビジネスに自分を寄せて挑戦していくような考え方だったのが、自分の得意な領域や好きな分野に林業を持ち込んで、自分のスキルを活かして相撲を取るというような考えに変わっていきました。

LVLの半年間、プランを作ってみては動いてみて、自分が楽しいと思うかどうかを何回も試し続けて。テーマラボでのメンタリング時に活動報告をするのですが、そのときに「楽しくないな」「何だかフワッとしてしまうな」と感じた場合は、潔くやめるようにしたんです。そうして残ったのが、今のあり方や事業です。

いま舩木さんと雲南市で始めているのは、「タタラボ」というプロジェクトです。数百年前の鉄屑が落ちていることが“普通”の雲南市の山で、日本の伝統的製鉄法「たたら製鉄」の文化を現代風に表現してみるプロジェクトなのですが、一度開催してみたところ林業スポーツのアイデアが湧いてきて。

「RINJYAK」と名づけて、将来オリンピック競技化を本気で目指してこのスポーツを盛り上げていきたいなと考えています。

タタラボで、森林の計測方法をレクチャーしている場面

お2人のこれからのご活躍、楽しみにしています。本日はありがとうございました!

LVLに参加する方へメッセージ

吉田さん:私は大好きだった仕事から離れるという喪失体験を通して、自分の本当にやりたいことを真剣に考えるようになりました。しかし、自分が思っている以上に自分のことは分からないものです。ローカルベンチャーラボは、「自分軸」を半ば強制的に徹底的に深堀りすることができる貴重な場です。地域の力を借りて自分らしい生き方・働き方を作っていきたい、そんな思いを持つ都会に住む30代のサラリーマンに強くおすすめします。/舩木さん:僕は自分の『想い』を追いかけて、山林という舞台へたどり着きました。これまで自分で考えて、育てて、蒔いてきた色んな種が、このラボと出会い、同期生の皆さんと繋がることで加速度的に成長を始めています。このローカルベンチャーラボでは、自分の『想い』を実現するあと一歩を後押ししてくれるはずです。そうして生まれいく新しい種とその成長を楽しみにしています!