INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 21.02.19

地域おこし協力隊1年目、地方での事業創造と関係人口づくりを学び、本気の情熱が生まれました。

  • 第4期生

秋田県湯沢市地域おこし協力隊

古賀恵理子さん

学ぶことの面白さを体感し、教育に魅力を感じ、大学卒業後は塾の全国展開や教育系出版事業を手がける企業に就職。働くなかで子どもたちに伝えてきた「好きなことをする人生」を自分も実現させなければと、2018年に退職し、夢だったシルクロードの旅へ。旅をするなかで地方の魅力を体感し、帰国後は秋田県湯沢市で地域おこし協力隊として小安峡(おやすきょう)温泉にあるキャンプ場を使った体験プログラムの創出、エリアデザインを担うことに。協力隊1年目の2020年LVLに参加。

企業を退職し、1年半のシルクロードの旅を経て、東京から秋田へ移住を決めました。

参加前はどのような活動をされていたのでしょうか。

大学卒業後から勤めていた教育系企業を2018年に退職して、1年半シルクロードを歩く旅をしていました。

教育事業に携わるなかで、子どもたちに「好きなことをすることが大切だよ」と伝えながら、「自分自身は本当に好きなことやれているのか?」と感じるようになり、世界を見てみたいという自分の想いを実現しようと旅に出たんです。

大学時代は山岳部だったので、シルクロードを歩いてみたいと、中国の西安からスタートし、中央アジア、イラン、コーカサス、トルコ、東ヨーロッパに西ヨーロッパ、イタリアのローマまで、できる限り徒歩の旅を続けました。

大都市や観光地に限らない素朴な地方を訪ね歩いて、知り合った方の職場や学校、自宅に行かせてもらいながら日々を過ごしていたのですが、その中で出会ったその国の日常の幸せや美しさにすごく心を打たれてしまって。

一方で、日本の地方と同様にどの地域も少子高齢化などの課題を抱えていて、こんなにも美しいその国らしさが消えていく流れをどうにかできないかと考えるようになりました。

また、旅の中で様々な国の自然との関わり方をみてきて、私は日本的な「共存する」自然との関わり方が好きだなと感じたんです。

そこで帰国して、日本の地方でその土地ならではの自然や文化を残すための活動をしたいと考えました。

ただ、私自身は家族が転勤族で、最終的に東京に暮らしていたので、どこでそれをしようかと悩んで。自分のルーツをたどったとき、祖母の家があった秋田には思い出がたくさんあるなと思いついたんです。

調べてみたところ、湯沢市でキャンプ場の体験プログラム創出を担う協力隊員の募集を見つけて、私は教育にも関わり続けたいと思っていたので、ここでならばやりたいことができるかもしれないと協力隊に申し込みました。

帰国後ありがたいことに採用していただき、市役所の方に研修代わりにどうかと勧められたのが、ローカルベンチャーラボです。

旅の途中、エベレストの前で

東京のサラリーマン生活では知り得なかった、地方での事業創造、関係人口創出を学ぶために参加しました。

LVLにどのようなことを期待していましたか?

ずっとサラリーマンだったので、起業や事業づくりについて知識も経験もなかったんです。知り合いにもそうした経験のある人はいなくて、まずは事業づくりについて学びたいと思っていました。

また、東京で育ってきたので、地方のことを自分はわかっていないなと感じていて。

地方創生においては「その地域を知ることが大切だ」といわれますが、そもそも地域を知るとはどういうことなのか学びたいと思っていました。

はじめに思い描いていた事業プラン、もしくは取り組んでみたいと考えていたテーマについて教えてください。

協力隊としてのミッションは、湯沢市の小安峡(おやすきょう)温泉というエリアにあるキャンプ場を使った体験プログラムの創出と、エリアデザインです。

そこに自分の強みを掛け合わせていくと教育体験プログラムを作っていくことなのかなとは思っていましたが、具体的なことまではまったく考えられていませんでした。

小安峡温泉の風景

テーマを絞らず幅広く受講、広い視点で地域を学ぶことができました。

4期はオンライン開催で、前半はインプット編として8つのテーマを横断した講義を受講していただきましたが、この期間の学びはどのようなものでしたか?

協力隊が始まって、本当にやりたいことは見えていても、どう手をつけていけばいいのかスタートの一歩目に悩んでいた状態でした。

改めて振り返ってみて、悩み続ける状況であった1年目の時に、ローカルベンチャーラボのインプット編を受けられたことは、とてもラッキーだったなと思います。

今回はオンラインですべて受講できたので、ほぼすべてのテーマの講義を受講して、凝り固まりすぎない広い視点での地域の見方を学ばせていただきました。

特にエリアブランディングについて、WIRED CAFE創業者の入川秀人さんから学んだ地域を見る視点はとても勉強になったと感じています。

自分を活かした地域との関わり方を知ることができました。

後半はテーマ別の学びでしたが、どのテーマを選ばれましたか? また、そこで得た学びはどのようなものだったでしょうか。

テーマは、事業との関連が一番深いと思った「関係人口」を選びました。

教育とも悩みましたが、最終的に事務局と相談していたときに関係人口テーマのメンターである高砂さんのお話が参考になりそうだと勧めてもらったんです。

地域への入り方に四苦八苦していたので、高砂さんが長崎県の五島列島に移住してから具体的にどう地域に入られていったのか教えていただき、とても参考にさせていただきました。

また、私が「地域のことがよく分からなくて…」と落ち込んでいたら、オンラインだけのコミュニケーションではあったのですが私の特性を見抜いてくださっていて、的確なアドバイスも頂けました。

私はいろんな場所を直接飛び跳ねるように見て回って、そこで見た良い部分を集約させていくタイプではないかとご指摘頂き、赴任当初からコロナの影響で出向くことが難しかったり、事業内容的にもいろんな場所を飛び回る類のものではなかったことが重なり、自分の不慣れな仕方で現地のことを知らないといけないと、勝手に追い込まれていたんですね。もちろん不慣れな仕方でもやれるようにならないといけないし、バランスをとる必要はあるのですが、一方で自分の得意な形を思い出して、地域内で飛び回りながら地域の原石を発掘すればいいということに気がつかせてくれるアドバイスをしてくださったんです。

また当初のプランに対して高砂さんから「なぜ秋田にこだわるのか、それは秋田じゃなくてもできることだよね?」と問われ、自分自身の地域への入り方の浅さに気づかされました。

「地域を深掘りして、その地域のDNAを体現するべきだ」「自分の周りにいる人たちと一緒にどんな共感がつくれるのか、そこからどう共創していけるのか、それこそが本当の関係人口をつくっていくことなんだ」という言葉もいただいて、地域の方々との関わり方が変化していきました。

自分がやりたいことを叶えるために地域の力が必要なのだという情熱をちゃんと周囲に示していくことや、そうした情熱を持つこと自体が大事なのだなということも学ばせていただいたと思っています。

自分に欠けていた「食べていける」という視点で教育事業創造を模索することができました。

4期から新たに選抜メンバーによる研究プロジェクトがスタートしました。古賀さんは「地域×教育」研究プロジェクト(詳細はこちら)に参加されていたそうですが、どのような経験をされたのでしょうか。

研究プロジェクトでは、自分の芯である教育の部分に関して突き詰めて考えることができました。

最初にメンターの毛受さんから「そもそも教育に関わるということは冬山登山だ。苦しいものだと思って、どうか諦めないでほしい」と言われたことが印象に残っています。

喝を入れていただいて、教育事業でちゃんと食べていけるようになるというテーマで研究を始めたのですが、「食べていける」という意識は教育事業者あるあるですが私に最も欠けていたところだったんですね。

さらに自分の事業目的を目的属性・実施エリア・年齢・実施レイヤーで整理させていただいた経験は、事業創造をするうえで必須だったと感じましたし、講師の方からマネタイズを中心に様々なお話を聞かせていただき、たくさんのことを学ばせていただいた時間でした。

メンターやスタッフ、同期生とはどのような思い出がありますか?

1人で新たに地域に参入し、各隊員が個別のミッションを持って地域に入り込まなければいけない協力隊ですから、ともすると孤独になりがちなところを、「自分は1人じゃないんだな」と支えてもらえました。

マイナスな側面に意識がいってしまいそうなときも、話しながらプラスの側面に気づかせてもらえたり、LVLが終わってからも事業立ち上げの報告を同期生からもらったりしていて、着実に前に進んでいる姿に勇気づけられています。

オンラインでの学びの機会は初めてでしたが、実際にやってみて身体的負担が軽くとてもありがたかったですし、オンラインでもコミュニティは作れるんだなということを実感できました。

私の事業は関係人口創出でもあるので、正直このコロナ禍で手探り状態なのですが、逆にオンラインでつながれる時期だからこその可能性があると考えられるようになりました。

行政とのコミュニケーション方法、自分の情熱を周囲に伝えていく方法を知ることができました。

LVLの半年間を振り返ってみて、一番印象に残っているご自身の変化を教えてください。

最初は、自分が構想していた体験プログラムを教育と関係人口の観点から鍛え上げようと難しく考え、肩に力がはいっていました。あるときそうした理屈はいったん脇に置いて、自分はこの地域が、人が、単純に好きなのだと、活動する理由がシンプルに明確になったんです。

LVLに支えられながら地域と関わりを深めたり、地域の資源を知っていくなかで、この土地で子どもたちが育ったらきっと楽しいだろうなであるとか、単純に「好き」とか「楽しい」といった気持ちが大きくなっていった結果でした。

また、「色々言っているけれど、結局何を思っているの?」と問われ続けたことで、自分はおばあちゃんの家が、秋田の自然のなかで遊ぶのが大好きだったと気づくことができたんです。

頭の中がどんどんシンプルになっていって、人に情熱を伝えていけるようになるための変化を体験できたように感じています。

湯沢市内でのりんご収穫風景

半年間の一番の学びは何だったと感じていますか?

一番の学びは、自分の情熱を周囲に伝えていく方法を知ったことです。

同期生にはいろんな立場の方がいらっしゃって、自分とは違う視点を学べたことは、事業を進めるうえでとても力になりました。

たとえば行政の人たちにアプローチしていくとき、これまでは何だか話を噛み合わせることが難しいと感じていたのですが、同期生の自治体職員や行政と一緒に仕事を続けてきたメンターの方に相談して、どうコミュニケーションをしていけばいいのかを知ることができました。

組織によって考え方が違うので、伝え方も違うということも学びました。例えば、前職の民間企業ならビジョンを描いて伝えるというアプローチが組織を動かしていましたが、行政組織では課題と具体的な解決方法、効果を伝えるということの方が組織を動かします。

自分の情熱を軸に、相手の考え方に沿った方法で、人に伝える方法、可視化の仕方を学んだように感じています。

また、協力隊としての仕事を始めた当初は、事業はつくりたいけれど実際はなかなか難しいのではと考えていました。でもLVLに参加して、「できるんじゃないか」と意識や本気度が変化していきました。

夢物語で話していたことを実現するために、実際にどうしていくのかをこの半年間すごく問われ続けて、段々と自分がやればいいことが見えてきて、これだったら残りの2年間で実現していけるんじゃないかと思えるようになったんです。

仲間ができて、しんどいときでも自分のことを見ていてくれる存在にも、とても救われました。何より皆も本気だったので、その熱量に影響されて、背中を押してもらえた半年間だったなと思っています。

講義のメモをとり続けた80枚のノートも、最終的には3冊にまでなりました。改めて、地域おこし協力隊1年目にこの半年間を体験できたことはとても価値があったと感じています。

湯沢市で、まずは自分が「本気の人」の一人になっていきたいと思っています。

最後に、今取り組んでいることや、今後取り組みたいことについてお聞かせください。

研究プロジェクトで学んだ北海道のNPO法人うらほろスタイルさんの取り組みを参考にさせていただきつつ、現在は地域の子どもたちに向けた地域から学べる体験プログラムの創出に取り組んでいます。

小安峡温泉を新型コロナウイルス感染拡大が収束したときに行ってみたいと思える場所にすることを目指して、これからも地域から学べる体験プログラムづくりに奔走していきたいと思っています。

あとは、このまちで本気になる人が2人、3人と増えていって、たとえば岡山県の西粟倉村のような挑戦者がたくさん集まる自治体になれたらとてもおもしろいんじゃないかなと思っていて。

まずは自分がこの湯沢市で本気の1人になっていけるよう、頑張っていきたいです。

LVLに参加する方へメッセージ

LVLは、地域と自分と仲間をつなぐ場だと思っています。私のようにいざ地域へ入ったものの、どうすればいいのか分からないという人達には、地域との関わり方や仲間の作り方を教えてくれるような場であり、また、仕事や家庭の都合などで、地域に関わりたいと思いつつ「どうしたらいいのか迷っている」という人達には、現状の生活を大きく変えずに地域のことを学べたり、地域のことに一緒に関われる仲間ができたりする場でした。個人的には、LVLの人たちは皆さん、根底に地域や自分のやりたいことへの熱い想いがあるため、本気と本気のぶつかり合いや、本気で地域のことを考えられるという楽しみもLVLの醍醐味だと感じています。まずは地域が気になった、自分のやりたいことを地域でやってみたいという軽い気持ちでも、LVLに参加してみることで何か見えることがあるかもしれませんね。