INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 21.03.16

ただの旅行好きのサラリーマンだった自分。地域とつながり、動き出すことができました。

  • 第4期生

内田樹志さん

大阪府八尾市出身。大学卒業後は電機設備メーカーに就職し、営業、企画、セールスエンジニアとして活動。2019年にAIベンチャーに出向し、事業企画などを担当。灯りや伝統工芸が好きで、全国の関連イベントを渡り歩くなかで地域や伝統工芸の課題を知り、自分に出来ることを模索し始める。現在は材料や道具にも着目し、特に和ろうそくの材料から工芸品までが同じ場所で育まれ、新しい価値を発信できるようになるような「和ろうそくの里山」づくりに向けて活動中。地域の関係人口づくりや新しい循環を作り出せないか模索している。

長年通ってきた地域が苦境に立たされていることを知り、自分にも何かできないかと考えるようになったんです。

参加前はどのような活動をされていたのでしょうか。

東京で大手電機メーカーに勤めながら、趣味の旅行を通して地域と関わってきました。いろんな地域を巡って、その土地ならではのものを体験したり見たりすることがとても好きだったんです。

ここ数年は毎年2月に東北に長期滞在してきたのですが、2020年の冬はまったく雪が降らなかったことで旅館の方もスキー場の方も大変苦境に立たされていて。さらに新型コロナの感染拡大の影響が重なって、あるときは自分しか客がいなかったり、お土産も山ほど残っているような状況を目にしてきました。

地域の方から伺う話も深刻で、自分はこれまで非日常を求めて東北に通っていたけれど、地域の方にとって日常の場所がこんな状態ではいけないと強く感じ、どうにか仕事がなくならない仕組みを地域を楽しませていただいてきた一人として真剣に考えなきゃいけないなと思うようになりました。

ローカルベンチャーラボのことを知ったのは、そうしたタイミングでのことです。偶然Facebookで目に入ってきたのですが、この想いを何かしらかたちにできる可能性があるのならまずやってみようかと、思い切って飛び込むことにしました。

見ること聞くことすべてが初めてで、講義ノートは300ページにもなりました。

はじめに思い描いていた事業プラン、もしくは取り組んでみたいと妄想していたテーマについて教えてください。

これまでに自分が訪問した地域をもっといろんな方に知ってもらい、訪れてもらいたいということが漠然としたテーマでした。

また、コロナ以前はインバウンドで栄えていた地域だったのですが、今回コロナ禍でダメージを受けている状況をみて、日本にいる人たちへ向けて伝えていきたいと考えていました。

4期はオンライン開催で、前半はインプット編として8つのテーマを横断した講義を受講していただきましたが、この期間の学びはどのようなものでしたか?

すべての講義に出席させていただいて、多分一番コストパフォーマンスがよかったラボ生だったんじゃないかなと勝手に思っています(笑)。

講義のメモをとったノートは300ページほどにまでなりました。それくらい見ること聞くことすべてが初めてで、学びしかなかったんですよ。知りたかったことを知っていくのは、やっぱり楽しいなと思いました。

また、前半はテーマを絞る必要がなかったので、多角的に地域や地域で働く人たちに触れられたことが僕にとってはすごく良かったなと思っています。

「好き」を考え抜いたら、次の一手を判断できるようになりました。

後半はテーマ別の学びでしたが、どのテーマを選ばれましたか? また、そこで得た学びはどのようなものだったでしょうか。

選んだのは、地域と自分を活かすビジネス創造テーマです。もともと伝統工芸や伝統文化が好きで、伝統工芸のイベントには以前から頻繁に参加していたので、まずはこの分野をテーマに事業をつくっていこうと考えました。

当初は市町村が連携して仕事をつくっていくためのつなぎ役になれないかと思っていたのですが、前半のインプット編で学びながら「本当に自分ごととして取り組めることってなんだろう」と考え続けて、最終的に伝統工芸、特に和ろうそくが好きだという部分に特化して事業をつくっていく道が一番しっくりくるなと感じたんです。

実は、2020年はローカルベンチャーラボ以外にも伝統工芸のサロンに入らせていただいていました。今まで職人さんには直接会いに行かなければ会えなかったのですが、コロナ禍でオンラインでたくさんお話する機会をいただき、「伝統工芸がなくなるということは、そこに至る過程のすべてがなくなるということだ」というお話を伺い、何とかしなければと強く思うようになっていたんです。

ある伝統工芸が失われるということは、その材料や道具を作る技能もなくなるということです。それらを失くさずつないでいくために、分業ではなく一丸となった制作場所をつくったり、その技能を継承する人を育てることに取り組んでいきたいと考えるようになりました。

メンターの花屋雅貴さんからは、最初の一歩として「とにかく和ろうそくの話をするようにしなさい」とアドバイスをいただき、メンタリングでは延々和ろうそくの話をさせていただきました。また、発信する際にはつい色んな情報を付けたくなるものですが、まずは僕自身が純粋に好きだと思う部分を表現することが一番大切だともアドバイスを受けました。

同期生の中にはそんな僕の話を聞いて買ってくださる方、使っていただけるようになった方もいらっしゃいましたし、自分の好きを見つめ続けて「何がどう好きなのか」まで落とし込めたことが現在の活動の支えになっていると感じます。

いまは鹿児島県の錦江町で事業を進めているのですが、自分の中の「好き」が明快なことで、次の一手のために何が必要か判断できるようになりました。そうした段階まで成長させてもらったなと思います。

シェアビレッジ町村(秋田県五城目町)での萱刈イベント。工芸士や地域活動されている方を訪ね、飛び入り参加

メンターの視点が刺激となり、地域への見方ががらりと変わりました。

4期から新たに選抜メンバーによる研究プロジェクトがスタートしました。内田さんは「エリアブランディング」と「関係人口」の研究プロジェクトに参加されていたそうですが、どのような経験をされたのでしょうか。

事務局に頼み込んで、テーマ選択と合わせて合計3つのテーマで学ばせていただきました。ローカルベンチャーラボに参加した動機からも関係人口のテーマはどうしても学びたかったのと、エリアブランディングについては全国転勤がある会社で地方で仕事をしてきた時間が長かったので、まちづくりに関心があったんです。

『かまいし”シン・関係人口論”共創ラボ 〜釜石のこれまでとこれからを研究する』(詳細はこちらから)では、「関係人口って何だろう?」という状態から参加したのですが、最終的にはメンターを中心に関係人口マトリクスを作り上げ、関係人口に存在する幅や濃淡を学ぶことができました。

『かまいし”シン・関係人口論”共創ラボ』が今期の研究成果として作成した、関係人口を4象限に整理したもの

また、釜石市の関係人口を分析しながら「学校」というメタファーでこれを考えてみることもできそうだなと思っていて、釜石市のアルムナイコミュニティの継続について、もっと深掘りしてみたいなとも感じています。

『エリアブランディングのためのバーチャル手法開発 〜withコロナ時代における新しいフィールドワークの形とは?』(詳細はこちらから)では、メンターの入川さん、寺井さんのお2人の視点をデジタル化することが僕が参加していた技術チームの命題でした。

お2人が持っている視点は僕にとって本当に新鮮で刺激的で、言語化・体系化するためにかなり時間をとってお話を伺えたことで、一層学びにつながりました。

今までどれほど自分がぼんやりとまちを眺めていたのかが分かって、過去に訪ねた地域も学んだ視点で見直したらまったく違うものが見えてくるんじゃないかなと思うくらいでした。

この先一緒に仕事をしたいと思えるつながりを得られたことが、一番の財産です。

メンターやスタッフ、同期生との関係性はいかがでしたか?

非常に良かったです。特に僕の参加したピアメンタリンググループはメンバー同士のマッチングがうまくいって、最後まで定期的なメンタリングを継続することができました。

先日もピアメンタリングのメンバーに事業相談をして人を紹介してもらいましたし、研究プロジェクトで知り合った同期生からは「妄想会議をやるから付き合ってくれないか」と楽しいお誘いをいただいたり、今回僕はいろんなチームに参加したおかげで、多様な専門を持つたくさんの相談相手をつくることができました。

将来的にこの人とこんな仕事をしてみたいであるとか、この先つながっていきたい人とのつながりを得られたことは、ローカルベンチャーラボで得た一番の財産だと思っています。

今回はオンラインプログラムでしたが、関係性醸成のために工夫されたことはありますか?

2020年の5〜9月は仕事でも在宅勤務が続いていて、そのときに短い時間でもいいから話す回数を増やすとオンラインでもコミュニケーションがうまくいくなと学びました。そこから、ローカルベンチャーラボでもとにかく話す回数を重ねることを意識しました。

特にオンラインではじめて会う人は、少し時間が空いてしまうと他人のようになってしまうんです。とにかく顔と名前が一致するまで、いろんな機会に出席するようにしました。

「やってみたら、地域が返してくれる」。その言葉を実感した半年間でした。

LVLの半年間を振り返ってみて、一番印象に残っているご自身の変化を教えてください。

参加前に一番心配だったことは、すでに事業を起こしている“すごい人”ばかりだったらどうしようということでした。自分は本当に何も知らない状態で参加したので、正直怖かったんです。

でも、実際入ってみると、僕みたいにまだ何もされていない普通のサラリーマンの人も、地方と関わり始めたばかりの人も、会社をバリバリ経営している人も、とにかくいろんな人がいました。

不安が払拭されたのも嬉しかったのですが、そうした多様な参加者から地域との様々な関わり方を知ることができて、それはとても助けになりましたね。

また、「本当にこんなことしてもいいのかな?」という気持ちは今もあったりするんですよ。でも「やってみたら地域の方が返してくれるよ」とみんな言うんです。そうしていろんな情報をくれたり、人とつないでくれたりして、みんなの力を借りながら実際に動いてみたら、本当にその通りで地域の方が“返してくれる”んですよね。

新型コロナの影響で東京で働く自分は地方との往来を制限せざるを得ませんが、次に訪問するときはこんな人と繋げてみるよという話もいただいているので、諦めずに動き続けてみたいと思っています。

本当に何も地域のことを知らなかった自分にも、実現できる可能性を見せてもらえた機会だったと感謝しています。

今取り組んでいることや、今後取り組みたいことについてお聞かせください。

日本で初めてハゼノキが植樹された地域でもある鹿児島錦江町で進めようとしているプロジェクトでは、栽培地を検討しながら原材料となるハゼノキを植える計画を進めています。ただハゼノキの育成には10年かかるので、すでにハゼノキを育てている方たちや錦江町の方たちにもご協力いただきながら、材料の栽培・道具づくり・技能継承・製造を一貫して行い、その活動が地域の中で新しい循環を生み出せるような和ろうそくの里山を地道に作っていきたいなと考えています。

ただ、ハゼノキは歴史的に薩摩藩の農民を苦しめてきた一面があるので、植林にご理解いただくためのコミュニケーションには十分に時間をかけなければと思っています。一つひとつ丁寧に、これまでこの町にあった産業を新しいかたちで復興するという視点を大切にして取り組んでいきたいです。

また、伝統工芸の情報を発信する場所として、東京近郊に伝統工芸カフェのような場所を作るための物件も同時に探しています。若い工芸士の方の作品を展示したり、実際にものづくりを体験できる場所を作りたいんです。

LVLに参加する方へメッセージ

1年前の私は、単なる旅行好きのサラリーマンでした。地域に対して漠然とした課題感はもっていましたが、具体的なアクションを取るわけでもなくただ旅行を楽しんだり、仕事で訪れたりという状況でした。そしてまさに1年前、大きな変化に見舞われた地域を目の当たりにして、自分の心の中で「何とかしたい」という想いが大きくなるのを感じました。その「何とかしたい」を膨らませる手助けをしてくれたのがLVLでした。もし今「想い」を持っていて、それをどうしていけば良いかわからず迷っているのであれば、思い切って飛び込んでみてはいかがでしょうか。ここには一緒に歩いてくれる仲間や、背中を押してくれるメンターの方がいます。時には厳しい意見をもらうこともあるかもしれませんが、それほど真剣にこちらに向き合ってくれます。「何とかしたい」の次が踏み出せない方、LVLに次の一歩を踏み出す勇気をもらいにいきませんか?