INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 20.03.23

“真剣に考える”考え方を学び、覚悟が決まった半年間でした。

  • 第3期生

宇都宮千愛さん

熊本県南小国町出身。新卒入社した大手旅行会社で15年間勤務し、支店長を約7年間経験したのち独立。2018年の年末に南小国町にUターンし、地方でも稼げる暮らし方を模索しながらフリーランスとして活動している。現在MBA(経営学修士)学位取得に向け大学院在籍中。

大企業を退職し、Uターン。
地方でも稼げる暮らし方を作るための
学びの機会として参加しました。

LVL参加前はどのような活動をされていましたか?

参加の前年に新卒から15年間勤めた大手旅行会社を辞めて、故郷である熊本県南小国町に戻り今後の生き方ややりたいことを模索していました。在籍中は九州圏を点々として、支店長を任されやりがいを感じていたのですが、辞める1年前に営業本部に異動になったんです。一応花形の部署で、海外ツアー企画をすることになったのですが、そこでの経験から大企業で働くことに疑問を持つようになりました。MBAを取得するため大学院に通い始めた時期だったので、学んだことを活かそうと模索する中で大企業の難しさにぶつかったんですね。

そうしたとき、ふとこれまでのことを思い返したんです。私の育った熊本県南小国町では、中学を卒業すると親元を離れて町外で暮らしながら学校に通う人が多くいます。私ももれなく家を出てからの方が時間が長く、親と過ごす時間が少なかったのでその時間を取り戻したいと感じました。そして、都会にチャンスが集中しているように一般的には思われていますが、これまで培ってきた経験やスキルを活かせば、南小国に限らず田舎と呼ばれる場所でもチャンスがあるのでは? と思ったんです。完全に思い込みでしたし会社にはものすごく止められましたが、思いついたら行動しないでいられない性格なのと、考えたら考えただけ悩むので深く考えるのはやめにして、会社を飛び出しました。

 

どのようなきっかけでLVLと出会いましたか。

2期に参加していた南小国町役場の職員が中学の一つ下の後輩で、彼女に戻ってきたが何をするかは決めていないと話をしたら、「これに絶対行ってください!」と勧められたんです。正直半信半疑だったのですが、「色んな人と出会えるし、参加者の本気度が素晴らしい」と言われて、そんなに熱い場所ならばと参加を決めました。

 

LVLにどのようなことを期待して申し込みましたか?

事業アイディアのブラッシュアップや、人的ネットワークですね。参加者の皆さんもそうですが、実践で豊富な経験をされてきた方達がファシリテーターやメンターをされていたので、そうした方からの学びは大きいだろうと思っていました。また、田舎は平均所得が低いですが、こうした現状は私たちが変えていかなきゃいけないのではと思っていたので、そのためのヒントを得たいと思っていました。

最後の最後、問われ続け見つけた「真ん中」が
アイディアの質を変えていきました。

どのような事業アイディアを考えていたのでしょうか。

とてもざっくりした状態だったのですが、まずは地域産物を加工して雇用を生み出し、地域に貢献したいと考えていました。それというのも、母が地元でとれたものだけでグラノーラやコロッケを仲間と作って売っていたんです。私が住んでいる地域は14世帯ほどの小さな集落なのですが、おばちゃんたちは全員私の親世代で、皆で地域おこしをやろうと夏場には農業用ハウスを活かした流しそうめんハウスを作って、1日で100人もの集客をしてしまう人たちなんですよ。そんな姿を間近で見ていて、私にも手伝えることがないかと常々思っていましたし、彼らにできるなら私にもできるんじゃないかという思いもありました。

LVLで印象的だったことを教えてください。

軽い気持ちで申し込んだわけですが、実際に地方の方と会ったり、現地に行くとその場所がどんどん素敵に感じていくんですよ。私の場合はメンターの畦地履正さんが代表取締役を務める「株式会社四万十ドラマ」の現場である高知県四万十町にフィールドワークに行ったのですが、そこで実際に現場で働かれている方や生産者の方たちと出会い、どんな思いや考えを持っているのかに触れることができた経験はとても大きなものでした。

高知県でのフィールドワークでは、カツオの藁焼き特別体験も

四万十ドラマが立ち上がっておよそ25年ですが、協働している方たちの活動一つひとつがしっかりしていて、組織運営についても、どうしたらお客さんが喜ぶのかも研究され尽くされていると感じました。特に農家バイキングをしている「株式会社十和おかみさん市」は、社長はもう70歳で、20年間会員200名をまとめながら運営が継続しているんですよね。会員の年齢層・考え方も様々な中で、最も皆が参加しやすい、だけれどもしっかり稼働する仕組みづくりをされていました。それをそのまま南小国町に持ち帰ることはできませんが、その土地に合ったやり方を考えていること、大前提としてとても人を大事にしていることを実感できました。

フィールドワークは石巻にも。こちらはホヤ養殖場の視察場面

 

ファシリテーターとメンターのお二人との関係性はどのようなものでしたか?

お二人ともお酒が好きで、とにかくよく飲みに行きました(笑)。 「地域商社」で本当に良かったなと思っていて、お二人とも実践経験が豊富で、人間的にも尊敬できますし、古い知人同士ということでお互いの信頼関係が強く、こちらも安心して学び続けることができました。私は最初からお二人のことを詳しく知っていたわけではなかったのですが、会うたびにお二人に惹かれていった感じですね。お二人の経験に裏付けされた言葉が、自分が地域で実践を重ねるたびに刺さるようになっていくんですよ。ラボ生たちがモヤモヤと感じていることを相談すると、「それってこういうことだよね?」と一言にまとめて腹落ちさせてくれる言語化の力が素晴らしかったです。

フィールドワーク後の飲み会にて

あとは、お二人ともすごく優しいんです。経営者という厳しい経験をなさっている方々なのに、私たちの未熟なアイディアを引き出し、それをより現実的なものに熟成させていくことを重視していて、基本的には厳しい批判をせずにまずは受け入れてくださるスタンスでした。

また、事務局スタッフの伊藤さんの存在は大きかったです。相手を思いやるお人柄と豊富な経験から、私たちがどういったところで悩みやすいのか肌感覚で察知してサポートしてくださって、励ましてくださいました。伊藤さんいなかったら、あそこまで思いっきりファシリテーター・メンターのお二人と人間関係は作れなかったと思っています。

夏の中間合同ラボでメンタリングを受ける宇都宮さん

 

宇都宮さんは、畦地さんからのある言葉にデモデイ当日までずっと悩まれていたそうですね。

そうなんです! 当初から畦地さんは「真ん中が大事だ」とラボ生に言い続けていたのですが、正直私は「真ん中って何!?」という状態で……。「アイディアはたくさんあるけれど、『真ん中』がないとダメだ」と言われ続けて、デモデイ当日になってやっと「真ん中」とは何なのか、自分がどうあるべきなのかが分かったんです。本当にギリギリでした(笑)。

私はずっと、例えば「コロッケを売るときにこうしたらいいのでは?」といった小手先のアイディアを語ってきて、それに対し畦地さんからは「どれも否定はしないけど、何に基づいて行動しているの? 何が本当はしたいの? 『真ん中』だけは会社を経営する上で普遍的だから、まずはそこをはっきりさせようよ」と問いかけられ続けたんです。最後までそれがどうしても分からなかったのですが、デモデイ直前のテーマラボでの飲みの場で「宇都宮さんが普段からぼんやり考えているような、地域から生み出されるものに付加価値をつけて田舎暮らしを次世代へ繋げるという意味を持つ一言ってないのだろうか? できれば普段おばちゃんたちが生活の中で使ってるいるようなもの」と言われて、母に電話してみたんです。その場では結局分からなかったのですが、あとで母から「もやい」という言葉が出てきて、ああこれだ!! と思いました。

「もやい(催合い)」というのは実は標準語なのですが、共同での労働や共同施設、財産を指します。私の田舎では、何かあって皆でやればいいじゃないかというときや、寄り合いで何かが余って分け合って持ち帰ろうというとき「もやいあおう」と言います。私の家は林業家なので、山林荒廃をどうにかしたいという思いがずっとあり、山林や里山での暮らしを次世代につなげたいと思っていました。その「もやい」が自分にとっての「真ん中」だと気づいてからは、アイディアの質が変わっていったと感じています。

現場の声を聞くようになり、
今新しく町の旅館の女将さんたちとの挑戦が生まれています。

最終的に残った企画はどんなものですか?

「もやい(催合い)」が軸になったことで、山林荒廃を止めるための新しい生産性・価値を山林に生み出すためマウンテンバイクコース構想が生まれました。また、母親たちの生産グループでのライ麦を利用した新製品案、安定的な販売を目指すプランを考えました。

 

参加後の変化について教えてください。

参加前は漠然と想像で動いていたのですが、頻繁にどこでも出かけて現場で汗をかいている人と会って話すようになりました。想像をベースに自分がこうしたいと思って動くよりも、実践している人たちがどんなことに困って悩んでいて、自分にできることは何だろうと逆説的に考えるようになったんです。そうしてたくさんの現場の「点」を知り、今ではこれらを「線」として繋ぎ、新しい価値を生み出せないかと考えるようになりました。

 

今取り組んでいること、今後取り組みたいことを教えてください。

現場の声を拾っていき、南小国には今新たな着地型の観光業が必要なのではないかと感じたので、地元の旅館の女将さんたちに相談しながら現在開業準備を進めています。地元の本当の魅力であるそこで生きる人の営み、田舎暮らしをたくさんの方に体験してもらい、参加者の喜びや学びを引き出す事業を作っていきたいと思っています。

山林にマウンテンバイクコースを作る構想は中々収益性が難しく頭を悩ませていますが、母親たちの生産グループの事業ブラッシュアップを丁寧に続けながら、引き続き実現に向けて試行錯誤してみたいと思っています。

LVLに参加する方へメッセージ

LVLは、より覚悟が決まる場所だと思います。ファシリテーターやメンターから“真剣に考える”考え方を学び、自分の考えをブラッシュアップしていくことで、自分がやるべきことが見えてきます。やるべきことが明確になれば自然と覚悟は決まっていき、覚悟が決まれば行動が変わります。この一連の変化は、一生ものの価値があると思っています。また、ここで繋がった方とは10年後どこかで絶対に繋がってくるはず。そうした出会いと学びを求めている方は、ぜひ参加してみてください。