INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 21.03.03

地域への見方が変わり、この事業にとって大事なことは何かに気づかされました。

  • 第4期生

一般社団法人HitoReha 代表理事/理学療法士

横山 翼さん

兵庫県宝塚市、1991年生まれ。2011年の東日本大震災を機に、藍野大学(大阪府)を卒業後、宮城県石巻市に2014年移住。理学療法士として4年間病院に勤務しながら、地域住民との交流と健康の場を開くため、まちづくりや地域づくりに参画。その後、通所および訪問分野での介護事業に関わり、2020年2月に一般社団法人Hito Rehaを設立。 障がいを抱える方とその家族にフォーカスした障害福祉業を営み、障がいを抱える方の生きやすい暮らし創りと多世代に渡って福祉がシェアリングされる仕組みづくりを本格的に始動している。その傍ら訪問リハビリテーションを通して在宅ケアを実践している。

地域と障害を持つ方をつなげるため、「地域での」事業創造を学びたかったんです。

参加前はどのような活動をされていたのでしょうか。

宮城県石巻市で理学療法士として介護や障害福祉の事業所で働いてきたのですが、2020年2月に「障がいを抱える方のチャレンジが人と地域を繋ぐ社会を創造する」というビジョンを掲げ一般社団法人Hito Rehaを設立しました。

石巻市で暮らしながら、地域の温泉やカフェに行っても障がいを抱えた方やその家族を見かけないことに違和感と疑問を持ち続けていたのですが、ある日障がいを抱えた方から「海に入りたい」という相談をいただいたんです。

その出来事をきっかけに、障がいを抱えた方がまだ見ぬ景色を見るきっかけを人や地域とつなぎながら創ることができるのではないかと、起業を決めました。

また、この国では障害を持っていても制度の狭間で制度を助けに暮らせない方たちがいらっしゃるので、僕らは保険制度を使わない障害福祉事業に取り組んでいこうと思っています。

障害を持っている人たちと地域住民の交流を生み出して、自然と支えていく文化が芽生えれば、福祉をシェアリングするような仕組みがつくれるのではないかと考えているんです。

現在は、様々なテーマで利用者同士が対話できる機会や福祉情報を提供するオンラインコミュニティ事業を中心に運営しています。

海に入るイベントでの一枚

LVLにどのようなことを期待していましたか?

オンラインコミュニティ事業以外に、もう一つ漠然と始めてみたいと考えていたサービスを形にしたかったんです。

また、起業したばかりだったので、まずは頑張っている人たちとつながりたいと思っていました。自分一人で事業をつくっていくことは難しいと感じていたので、メンターや仲間に助けてもらいながら挑戦していけたらと思っていたんです。

また、理学療法士として病院や介護施設で勤めた経験はあっても、ビジネス経験がなかったので、同時にグロービス経営大学院にも通いながらローカルベンチャーラボで地方での起業や経営を学びたいと思っていました。

メンターの言葉が、ビジョンへの向き合い方を変えてくれました。

4期はオンライン開催で、前半はインプット編として8つのテーマを横断した講義を受講していただきましたが、この期間の学びはどのようなものでしたか?

石巻市には5年前から住んでいましたが、医療や介護の現場は人と関わることが中心で、地域全体を捉える機会はこれまでにありませんでした。また、まちづくりにも少しは関わってきましたが、それだけでは地方での起業はまったく分からなくて。

起業してから仮設住宅でのヒアリングも行いましたが、自分たちのサービスは本当に地域のためになっているのだろうか、社会の実態に即しているのだろうかと、不安に思っていたんです。

そんな状態でのインプット編だったので、得た知識はとても新鮮で、視点が広がり、それによって大きく道が開けたと思っています。

たとえば岡山県西粟倉村でローカルベンチャーを経営されている牧大介さんが、「ローカルは短期間ではまったく変わらない」といった話をしてくださったのですが、言われてみればすぐに納得できる事実なのですが、言われるまで気づかなかったんですよね。

経営者の目線で会社存続のためにどう利益を得ていくのか、そこに意識が集中していた自分に気づかされ、10〜20年かけて地域と関わっていくのだからと、ビジョンへの向き合い方が変わっていきました。

また、エリアブランディングで学んだ地域の見方・手法で、候補として挙がっていた拠点を見つめ直すこともできました。

社員の子が「このエリアで事業をつくってみたい」と言ってくれていて、せっかくエリアリブランディングを学んだから一緒に地域を歩いてみようかと、3時間ぐらい一緒に歩いてみたんです。

すると確かにこの地域はいいなと納得できるポイントを見つけることができて、拠点をその候補地に決め切ることができました。

また、そのエリアで実際に動き出してみたら、いろんな人とものすごいスピードでつながっていき、1〜2ヶ月で最初のアクションを起こすことができたんです。

対話会の様子

起業1年目、実践&メンタリングの愚直な繰り返しと仲間が支えになりました。

後半はテーマ別の学びでしたが、どのテーマを選ばれましたか? また、そこで得た学びはどのようなものだったのでしょうか。

エリアブランディングと悩んだのですが、事務局の方と相談してソーシャルビジネスに決めました。

ソーシャルビジネステーマでは、何か学んだというよりもそれぞれが目指しているものを言語化すること、具体化していくことに取り組みました。

また、ビジョンは描きっぱなしにするのではなく、ちゃんと行動しましょうと伝えられ、とにかく実践を重ねましたね。月に1度メンタリングがあったのですが、そのときに必ず動いてみての学びと気づきをシェアし続けました。

新型コロナウイルス感染拡大でなかなか動けない時期ではあったのですが、それでも背中を押されて少しずつでも動けたことが、確実に現在につながっていると思います。

石巻のまちなかでのイベントの様子

半年間の中で特に印象的だったことを教えてください。

ローカルベンチャーラボがはじまってすぐにスタートした、ピアメンタリンググループ(※事務局によってランダムに組まれたメンタリングのための4-5人のグループ)の同期生たちとの付き合いですね。

月に1度はメンタリングをしてくださいと事務局からは言われていましたが、僕らは前半は2週間に1度、後半も月に1度のメンタリングをずっと続けてきました。メンバーは4人なので、1人1時間ぐらい時間をとって、お互いの事業の近況をしっかり伝え合ってきたんです。

メンバーの活動地域は北海道に静岡、神奈川と、まったく別々のエリアで、取り組みも林業や教育、エンジニアにマーケティングと、まったく特色が違うメンバーたちでした。だからこそいろんな刺激をもらえて、とても仲良くなれました。

最初から一緒だったので、メンバーそれぞれの事業の変化に励まされることもありましたし、ラボが終わった今も付き合いが続いていて、コロナが落ち着いたらそのうちの1人の地域に学びにいく予定です。

地域への見方が変わったことで、この事業にとって大切なことが何なのか気づかされました。

半年間の成果について教えてください。

具体的な事業の形はラボが終了してから見えてきたのですが、ラボの半年間で拠点を決めて動いてみて、どんどん人とつながって、メンターや同期生たちと事業について考える中で、会社の中長期的なビジョンを描くことができました。

僕の問題意識は、障害を持つ人たち自身が自分たちの可能性に気づけていないということなのですが、地域とのつながりさえあれば、障害を持っていても自分の大事にしていることや、楽しい、好きだと感じていることを仕事にすることだってできるのではないかと考えていました。

ただ半年間で、つながりや助け合いだけでは不十分だと認識が変わり、障害を持つ方が地域の中でたくさんの経験を積んで、自分の「好き」や「大事」と出会っていくことがまず必要だと考えるようになりました。

僕らは障害を持つ方と地域との適切な出会い方や関係性の築き方をサポートして、その先にはじめて彼ら自身が仕事を選んだり、誰と暮らしていきたいか、どこで生きていきたいかを選べる未来があるのだろうと思っています。

そうやって持続的に暮らしを変化させ続けるために、僕たちは障害を抱える方たちと「一緒に」事業をつくっていくことが大事だと気づかされました。

参加後、どのようにご自身が変化しましたか?

地域を広い視点で見ることができるようになり、参加前は福祉領域内で動いていければいいと思っていたのですが、いろんな分野の方と協働する必要があるという考え方に変わっていきました。

また、同時に通っていたビジネススクールでは自分たちがやりたいことを実現するためのビジネスの知識を得ることができましたが、本当に自分がこの事業で実現していきたいビジョンをつくっていくためにローカルベンチャーラボでの時間が必要だったと感じています。

今取り組んでいることや、今後取り組みたいことについてお聞かせください。

まず一つは、どうやったら特別じゃない空間や特別じゃないものを通して障害を抱える方と地域が共存していけるのかに取り組んでいきたいと思っています。

たとえばマルシェなど交流イベント的なものは日本中で開催されていると思うのですが、どうやったらその交流を日常にできるのか、それに一番取り組んでいきたいと思っていて。

たとえば、障害を持っている方が就労して作ったものは、僕はちゃんと売れると思っているんです。障害を見ずに商品をみてもらって、そこに関係性が生まれる事業をつくっていきたいです。

LVLに参加する方へメッセージ

ローカルベンチャーラボは、自分の価値観や地域資源の見つめ直し、地域との関わり方を学び事業の深堀をしていくことで、「自分がやりたい」と思っていることの実現可能性を広げたり、高めたりすることができるラボです。たとえば現在やりたいことが明確でなくても、メンターや同期のラボ生同士で話しているうちに、価値観や視野の広がりから新たな事業の可能性に気づくこともあります。自分が本当に何をしたいのか気づくチャンスだと思います。ぜひ皆さんも参加してみてください。