INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 20.04.06

地域目線で考える力が鍛えられ、「地域の志と自分の志が重なる場所」を見つけることができました。

  • 第3期生

原麻里子さん

大学卒業後、太陽光発電システムの会社で働く傍ら、神奈川県藤野でパーマカルチャーを通じ自然と共生して豊かに生きるためのデザイン体系を学ぶ。その後パーマカルチャーや持続可能なコミュニティーづくりの理解をさらに深め、実践するためにオーストラリアの大学院へ進学。卒業後は現地の語学・職業教育訓練学校やコミュニティーづくりを行う団体で勤務し、2019年に帰国。現在は生まれ育った千葉県市原市で、まちづくり団体のCo-saten運営、空き家プロジェクト、里山暮らしの知恵を受け継ぐ仕掛けづくりなど小商いを行う。また、メルボルンの環境教育団体と日本でのサステイナビリティー・スタディーツアーの企画も行っている。

オーストラリアでコミュニティ開発を学び働く中、
日本の四季の魅力や各地でのクリエイティブな動きに
可能性を感じるようになったんです。

LVL参加前はどのような活動をされていたのでしょうか。

LVLを知ったのはオーストラリアで働いていたときで、ちょうど帰国を検討していたタイミングでのことでした。

大学までは日本で学び、国際政治を専攻して途上国の農業や食料問題、サステナビリティの視点からグローバルな環境問題に関心を持っていたのですが、卒業後は将来的に大学院進学を視野に入れながらも社会人経験を積もうと、太陽光発電の企業に就職したんです。そこで4年間営業として働き、そこからオーストラリアのメルボルン大学の大学院に進学してコミュニティ開発や農村開発を学びました。そしたらすっかりオーストラリアが気に入ってしまい、このまま永住したいと思って現地で就職することにしたんです。

転機は、コミュニティセンターでスタッフとして働き、オーストラリアでの生活も4年になろうとしていた時期のことでした。日本社会に閉塞感を抱いて世界に出たいと思っていたのですが、実際に離れて4年も経つと日本という国を俯瞰できるようになり、魅力と課題が見えるようになってきたんです。四季が暮らしに織り込まれている日本の生活の素晴らしさを改めて感じるようになり、オーストラリアからインターネットを通して知った日本各地で生まれているクリエイティブな動きに純粋にワクワクして、「人と自然の共存」をテーマにしているのならば私は日本でやることがあるのではないかと思い直すようになり、帰国を考え始めました。

そこから帰国後どんな選択肢があるかと調べていて、LVLに出会ったんですね。まったく知らない団体の取り組みでしたが、直感的に「ここに参加すればおもしろいことになるのでは?」と感じて駆け込みで申し込みました。

LVLにどのようなことを期待して申し込みましたか?

大学院にも行っていたのと、やってみないと分からないことが多いなと常々感じていたので、知識を詰め込むよりトライアンドエラーの方が学びは広がるだろうと実験的な「ラボ」という響きに惹かれて申し込みました。アイディアをとりあえず実行して、そこから得たフィードバックでプランを磨きあげられたらと考えていました。また、もともとコミュニティ開発を学んでいたので、新しいコミュニティのあり方だと感じた「関係人口」テーマラボに参加を決めました。

「地域の志と自分の志が重なる部分を見出しなさい」
カリキュラムが終わる直前、
はじめて実感することができました。

はじめに思い描いていた企画を教えてください。

日本の昔ながらの集落には、例えば田植えや茅葺き屋根の管理など一人で行うには大変な作業を共同で行う「結(ゆい)」という概念があるのですが、その日本独自のコミュニティの伝統に魅力を感じていて、地域の垣根を超えて「結」の現代版が作れたらいいなと思っていました。またフィールドは最初は決めきれていなかったのですが、地元の人たちや若手プレイヤーの方との出会いを重ね、さらにLVLでの学びを通して地元の魅力に気づいていき、ここでなら挑戦できるかもしれないと市原市をフィールドにすることに決めました。

参加された「関係人口」テーマラボではどんなことを学ばれましたか?

すごく印象的だったのは、ファシリテーターの中島敦さんに開口一番に言われた「このラボでは関係人口を作ろうとしてはいけない」ということです。「関係人口」テーマラボなのにどういうこと!? と思ったのですが、よくよく聞いてみると「自分がまずワクワクしながらやっていくことで共感を生んで、自然と人が巻き込まれていく。その結果が関係人口だ」ということで、あの日から半年以上経った今、自分が動き出したことで共感してくれる人たちが増えてきていてまさにその通りだなと実感しています。

また、ラボ中のフィールドワークではメンターの高砂樹史さんのフィールドである長野県茅野市を訪問したのですが、笠原地区のまちづくり協議会に勤める地元の方とお話ししたときに、自分たちのプロジェクトをとても誇りに思って楽しんでいることが伝わってきて、それまでは茅野らしい「凍みの文化」というコンテンツにその土地らしさを落とし込んでいるからプロジェクトが成功しているのかと思っていたのですが、人の想いがプロジェクトに反映されることではじめて魅力的なツアーになるのだなということを実感することができました。

また、宮城県気仙沼市にもフィールドワークに行き、気仙沼には震災後のボランティア経験を経て移住された人が多かったのですが、いろんなプレイヤーと話す中でできないことは抱え込まずに外部に相談したりお願いしたり、「企みナイト」としてイベントを作って企画段階から人を巻き込んだりしていて、“関わりしろ”の上手な作り方を学ばせていただきました。

長野県茅野市でのフィールドワークにて、御射鹿池(農業用ため池)ツアーの様子

LVLの中で特に印象的だったことを教えてください。

秋にテーマラボ内で有志のフィールドワーク企画があったんです。「ぜひ市原に」とフィールドワークを企画したら、皆さん忙しい中来てくれて、ファシリテーターの中島さんもいらしてくれました。

市原市の南から北まで活動している人々を訪ねるプランだったのですが、当時私がメインのフィールドにしていた最南端の加茂地区を訪ねたあと、「何を伝えたいかが分からない。地元の人と繋がっている感じがしないし、自分自身もありのままを見せていないんじゃない?」と中島さんに言われたんです。とてもショックだったのですが、何度もその問いについて考えていたら、加茂地区には自分のストーリーがなかったのではないかと気づきました。加茂地区をフィールドに選んだのは市内では一番過疎化が進んでいるという客観的な地域課題からで、さらに同地区内で違う空き家プロジェクトにも関わっていて、一緒にできる利便性からでした。まるで見透かされたような感覚で、改めて自分のストーリーはどこにあるかと考えたとき、市の中央部にある内田地区のことを思ったんです。

そのフィールドワークのときの内田地区の里山歩きにも手応えがあったのですが、思い返せば市原に帰ってからの原体験がそこにあったんですね。5月には4世代で田植えをして、夏も地元の人たちと蛍を見たし、ザリガニをとったりもしたなと思い出深い出来事ばかりで。さらに築100年近い木造の学校を先人が内田地区の未来のために建てたのだからと借金をしてまで守ろうとしているNPO法人があって、そうした地区のあり方と自分の中に共鳴して重なる想いがあることに気がつきました。メンターの高砂さんには「地域の志と自分の志が重なる部分を見出しなさい」と繰り返し言われてきていたのですが、そのとき初めてその言葉の意味を理解することができた気がしたんです。

中間合同ラボでのメンタリングの様子

メンターやファシリテーター、スタッフとはどんな関係性でしたか?

2人とも本当にあたたかい父親のような存在感だったのですが、中島さんは気さくな方で、フィールドワークに行っても一番にはしゃいで皆の雰囲気を作ってくれる一方、ここぞというときには気づきを与えてくれる存在でした。またLVLの期間中千葉では何度も台風での被害があって、そんなときいつもメッセージを送ってくださりとても励まされました。

高砂さんは大御所のご意見番で彼の前で発表するときにはいつも気が引き締まりましたし、自分は盛り上がって発表しても「それで結局何がしたいの?」と返されてはそうかこれでは伝わらないんだと学ばせていただきました。でも美味しいお魚とお酒がある場所ではとても陽気な顔を見せてくださって、以前フィールドにしていたという五島列島でのエピソードを聞いて、地域での草むしりといった泥臭いことも含め本気で地域と向き合う熱さは高砂さんから学んだと思っています。

事務局スタッフの林さんはいつもチャーミングで、コーチングの資格を持たれている方でいつもうやむやにしないで悩みを掘り下げてくれるので気づかされることが多かったですし、最後のデモデイのプレゼン前には勇気づけてもらい自信をもらいました。またラボ以外の部分でも人を繋いでもらって、そこから広がった事業もあったりと、本当に色んなところで支えてもらいました。

問いが生まれ、具体的なアクションが見えて
それを実行し続けたら波が生まれ、
「あとは進むだけだ!」と、覚悟が決まりました。

最終的に自分に残った企画について教えてください。

「結」のコミュニティを作るという当初のコンセプトは変わっていないのですが、それを内田地区の内田未来楽校のNPOの方たちとやっていこうと考えています。

具体的には日本の四季にもっと着目していこうと、1年間を24と72の季節に分ける考え方「二十四節気 七十二候」に纏わる里山の知恵を学ぶプログラムを作っていきたいと考えています。立春の時期には「東風解凍 (はるかぜこおりをとく)」と呼ばれる春が氷を解いていくところに山菜が出るとされる季節があるのですが、その時期に地元のおじいちゃんたちと山菜を採る体験プログラムを開催したり、「“集落まるごと”をシェアする里山暮らしの教室」をコンセプトにした、里山も学校もおばあちゃんの家も学び場にして地元の人たちが先生となった地域の伝統作業を学ぶ日帰り体験プログラムの実施を模索中です。ゆくゆくは、シェアハウスなどの宿泊施設も作っていければと思っています。

参加後、どのようにご自身が変化しましたか?

私はもともと自分のテーマやビジョン、やりたいことははっきりしていたのですが、メンターの高砂さんの影響を大きく受けて、「地域に泥臭く真剣に向き合い、地域目線でものを考える」ということができるようになりました。高砂さんからは「地域の人を巻き込むよりも、自分が巻き込まれていくような感覚を持てたらいい」と言われ続けて、例えばパーマカルチャーを市原の里山に持ち込んでもマッチしないけれど里山という文脈だったらその地に根付いてきたものでフィットするだろうであるとか、その土地の人が本当に何を大切にしていて何を次世代に残していきたいのかを掘り下げて見極める目が養われたと思っています。

また、LVLに応募したときには自分が起業することは想像がつかないなと思いながらも「とりあえずやってみよう!」と参加を決めたので、何をどこからやるか具体的なプランもなかったのですが、LVLに行く度にいろんな問いが生まれ具体的な小さなアクションが見えてきて、それを実行し続けたら波が生まれ、やるべきことが明確になり覚悟が生まれたなと感じています。「あとは進むだけ!」というところまで精神面を持っていけたこと、新しいことを始めるハードルが下がったことは大きな変化でした。

終了後もLVLのようなアウトプットの場を持とうと、今関わっている市原市のコワーキングスペースでプラン発表のイベントを企画したんですよ。LVLに参加して、アイディアを外に出してフィードバックを受けてブラッシュアップしていく癖がつきました。今はそのイベントでもらったフィードバックをもとに、現地に人がきてくれることがゴールではあるけれど、オンラインのコミュニティを広げていけないかとメディアの勉強をしています。

終了後の同期との関係性について教えてください。

参加中はそれぞれが迷走してもがいていて、LVL外でもZOOMで話したり、飲みに行ったりと、プラン以外の家族や仕事でもがいていること、生きる上での価値観を共有し合い、精神的な繋がりができたなと思っています。この半年間、皆で何度も何度もプランを考え練り直しているので、全国的に自分のサブプロジェクトが生まれたような気持ちです。

終了後にも近況報告し合ったり、同期生の家の西粟倉の木材でのDIYプロジェクトを手伝いにいったり、内田未来楽校に遊びに来てくれたり、コワーキングスペースを運営したいという同期生を私の関わる場所に招いたりと、プロジェクトじゃないところでも関係性が築けていて本当に本当に大事な仲間に会えたなと思っています。

「関係人口」テーマラボ

今取り組んでいること、今後取り組みたいことを教えてください。

地域の人たちと関係性をもっと作っていきたいので、内田地区で毎週開催されているお茶会に通ってネタを拾ってきたり、最近だと竹が地域に余って里山が荒れてしまっているので竹細工を作るための道具の扱い方を地元の方に教えていただいたり、罠に捕まった猪の解体を教えてもらったりと少しづつ体験を積み重ねてゆっくりゆっくり進んでいます。

内田未来楽校での猪の解体の様子

とにかく「あれもやりたい、これもやりたい、教えてください!」と騒いでいます(笑)。こんな状況下ではありますが、今年も少しずつでも進んでいければと思っています。

LVLに参加する方へメッセージ

LVLは自分次第でどうにでもなる場だと思っていて、より深い学びを得るために自分自身が学びの解像度を上げて挑むといいのではと思っています。フィールドワークで出会った人の言葉、メンターから向けられた言葉、同期に向けられた言葉も自分に言われたと思って置き換えてみて、どんなことも学びとして吸収してみてください。 また、次どうしていくのかの具体的なアクションプランを毎回求められるので、期間中は問いで溢れていましたし、小手指の細かいテクニックよりも具体的なアクション積み重ねることで、本質的な核の部分が見つかるはずだと思っています。それは地道で泥臭いプロセスかもしれないですが、その本質的な部分が固まることで、終わった後も自分の核を大事にしながら活動を継続できていることが今すごく収穫だったと感じられています。自分と地域に本気で向き合いたい人、進むための原動力を得たい人には、とてもおすすめなプログラムだと思います。