INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 19.04.13

土地の“DNA”を見つめたまちづくりへと、 視点を尖らせていくことができました。

  • 第2期生

合同会社sofo代表社員 / HABAYA.代表 兼 デザイナー

神脇隼人さん

千葉県出身。2013年に三井不動産レジデンシャルに入社、営業、マーケティング、ブランディングの業務を経験。 2018年7月より、自分らしい働き方や暮らし方を求め岩手県釜石市に拠点を移し、起業型の地域おこし協力隊(釜石ローカルベンチャー)として、釜石大観音仲見世商店街の活性化に取り組んでいる。同年12月11日に、仲見世リノベーションプロジェクトメンバーの仲間とともに合同会社sofoを設立。 2019年6月の「はじめにいくところ×いつもいるところ」となるカフェのオープンに向け、現在鋭意準備中。

釜石での新たな挑戦を前に、
憧れていた2人のもとで直接学びたいと思ったんです。

LVLに応募した当時のお仕事を教えてください

三井不動産レジデンシャルに勤めていましたが、既に退職の意思を企業に伝えていたタイミングでした。2017年のはじめごろから自分の事業づくりのために副業できる企業への転職を考えて動いていたのですが、現在拠点にしている岩手県釜石市の「釜石ローカルベンチャー(LV)コミュニティ」という取り組みと出会い、2018年の7月には退職して釜石と東京での2拠点生活を始めました。

サラリーマン時代には新築マンションの営業を担当していたのですが、一般的な人たちには購入が難しい高額物件を扱っていて、家族の幸せにつながる空間づくりがしたいという自分の原点からかけ離れてしまっている現状に違和感を募らせていきました。そうしてだんだんと「自分の事業をつくりたい」と思うようになり、その中で地域おこし協力隊の制度を利用した起業支援を知ったことで地域に関心を持つようになりました。LVL1期では自然資本テーマラボのメンターだった指出一正さんが編集長をつとめるソーシャル&エコマガジン「ソトコト」も読んでいたので、その影響もあったと思います。そうして自分でいくつかの地域と団体を訪問する中で、最終的に自分らしい働き方を実践する個人と地域・企業が共創するプラットフォームである「釜石LVコミュニティ」での挑戦を選ぶことになりました。

どのようなきっかけでLVLと出会いましたか

ローカルでの仕事づくりに関連した情報を集めたり、実際に地域を訪ねて人と出会う中でLVLのことを教えてもらいました。その時点ではすでに1期の募集は終了していて、来期の募集があれば申し込もうと思っていたのですが、その後「釜石LVコミュニティ」の方に1期生の報告会に誘われてより深く知っていった感じです。

LVLにどのような期待を込められていましたか

これから地域で活動していく中で助け合える仲間が欲しいと思っていたことと、釜石のまちの魅力をより深掘りできる視点を得たいと思っていました。でも実は、ファシリテーターで株式会社まちづクリエイティブ代表取締役の寺井元一さんから学べるということが一番の大きな理由でもありました。私は千葉県出身で、寺井さんの松戸駅周辺におけるMAD Cityプロジェクトに大学生のころとてもインパクトを受けたんです。

また、メンターの入川秀人さんが立ち上げた株式会社ダブリューズカンパニーが手がけるカフェ、恵比寿のCAFE PARKで結婚式の2次会をしたこともあり、ご縁があり憧れていたお2人から直接学べる機会だということにとても期待していました。

「課題を解決する」まちづくりから、
「土地の特性を活かす」まちづくりへ。

どのような起業プランを考えていたのでしょうか

リノベーションを通じたまちづくりを事業テーマにすることと、釜石市の釜石大観音周辺エリア、特に昭和50年代には20店以上の飲食店やお土産店が並び多くの観光客でにぎわっていた仲見世商店街を舞台にすることは決まっていたのですが、具体的なプランはまったく決まっていないままで参加しました。仲見世商店街は2017年12月には稼働店舗数が0になってしまい絶望的な状況での商店街再生でしたが、そうした前例のないことにチャレンジしてみようとスタートしたときに、参加したのがLVLでした。

LVLで印象的だったことを教えてください

LVLが始まったばかりの時期、入川さんに「まちづくりのために、どうしてカフェをメインで事業をされているのか」と質問したとき、入川さんは「場づくりのためならばカフェ以外の選択肢もある。カフェはあくまで手段の一つでしかない」とおっしゃったんです。当時はこれまでの経歴から入川さんはカフェに特別な価値を感じているのだろうと思い込んでいたので、あくまでもまちの全体感を捉えたうえで機能としてカフェを選んでいるのだなと、さらにカフェ自体にもどのような機能を持たせるのかを考えて仕掛けている姿勢に感銘を受けました。

一方で寺井さんからは常に鋭い視点のコメントをいただいていたのですが、最後のデモデイで「まちに課題なんて実はないのではないか」と言われたことが印象的で、今では本当にその通りだなと思っています。“課題”だと思っていたことが、もしかしたら“魅力”なのかもしれないんですよね。一般的にスクールのような場では「課題を解決する」という方向性になりがちですが、最終的に「課題なんてない」というところに落ち着くという、受講前からするととても衝撃的な言葉ですが、受講後にはこの言葉がすっと腑に落ちるようになりました。

また、全体を通した考え方の変化でいうと、だんだんと自分らしさが出せるようになっていったと思っています。以前勤めていた会社は大きな企業だったので、どうしても機能的に物事を捉えるくせが身についていて、全体像をおさえすぎた起伏のない“優等生っぽい感じ”のプレゼンや資料を作っていたのですが、入川さんに「さらに一歩踏み込んだ地域の特性をおさえられていない」と言われ、本当にその通りだなとぐっさり刺さった経験が変わっていくきっかけになりました。

不動産は地域特性が強い分野なので、全体像をおさえたコンサルタント的な視点は求められていないと考えてます。例えば、仲見世商店街の錆だらけになった鉄骨について最初はすべて綺麗にしてしまおうと思っていたのですが、そこで綺麗にしてしまえば他のまちと一緒になってしまうんですよね。私自身も、最初の素直な直感では仲見世商店街のそのままの状態に可能性を感じていて、それこそ場の魅力が釜石で事業をつくる決心につながったのですが、鉄骨やぼろぼろになったテントは綺麗にしなきゃいけないかななど揺れていた部分があったんです。けれど入川さんから一歩踏み込んだ地域の特性をおさえる必要性を指摘され、さらにテーマラボの皆に商店街の写真を見せて「このままでいけるね」と言われたことがきっかけとなり、確信をもってこの風情こそが仲見世商店街の魅力なのだと、土地の特性を活かしきれるようになったと感じています。それこそ、寺井さんがデモデイでおっしゃっていた「課題なんてない」という意識にたどり着けたのかなと思っています。

メンターやファシリテーター、同期生たちとはどのような関係性でしたか

入川さんも寺井さんも大御所の方々ですが、とてもフランクに接してくださいました。また同期生たちはそれぞれ尖った事業に取り組んでいたり、LVLをこえて所属している企業同士で本業としてコラボレーションを生み出していたりと、刺激をもらいました。

釜石大観音仲見世商店街

土地の“DNA”を見つめ、
釜石らしく、そして自分らしい視点で
突き進んでいけるようになりました。

最終的にはどのようなプランが残りましたか

入川さん、寺井さんから言われ続けた、土地の歴史を紐解き、住民の思いを吸い上げることの大切さを軸に釜石を見つめたとき、釜石は戦時中には艦砲射撃を2度も受け、東日本大震災を含む3度の地震を体験し、その度によそ者と地域の人たちが手を合わせ乗り越えてきています。こうした歴史がある中で、一度は稼働店舗が0になったこの商店街の再生、そして新たな文化を創造していくことに取り組むことは、釜石ならではのDNAに紐づいているものだと気づきました。そうして2018年12月、自信を持って仲見世商店街をエリアリノベーションするための合同会社「sofo(ソホ)」を、建築士として2013年に釜石市に移住した宮崎達也さん、東京池袋本町、福島県南相馬市、岩手県釜石市の3地域でリノベーションまちづくりに携わる堀越圭介さんと共に立ち上げることができました。

また2019年1月から3月にかけて、クラウドファンディングを実行し、無事に目標金額を達成することができました。カフェについては、もともと一つの案として考えてはいたのですが、採算性の問題でやれるかどうか正直分からないと感じていたんです。けれどLVLで学んだエリアブランディングの視点でまちを捉え直したとき、「はじめにいくところ×いつもいるところ」となる拠点となるカフェが必要だと確信をもって考えられるようになり、このクラウドファンディングに踏み出すことができました。

合同会社「sofo(ソホ)」の3人。左から神脇さん、宮崎さん、堀越さん

LVLに参加前と参加後で、どのような変化がありましたか

やはり、会社に勤めていたときは尖りのない全体感をおさえた視点を語りがちだったのに対し、その地域らしい、もしくは私らしい視点を自信を持って語れるようになったことでしょうか。そうした自分ならではの視点が出せるようになったのは、LVLを通して入川さん、寺井さん、同期生の皆からプランへのフィードバックを得ていく中で鍛えられたからだと感じています。

今挑戦している活動を教えてください

2018年にはコワーキングスペース「co-ba kamaishi marudai」がオープンし、民泊「あずま家」も始まり、2019年の初夏には「sofo café」がオープン予定と、仲見世商店街全体の活性化に向けて着々と事業が進んできています。この先も、例えば空き家の家具をリノベーションする事業といったような、釜石という土地の“DNA”である「復活と創造」をテーマにした動きを仕掛けていきたいと思っています。

LVLに参加する方へメッセージ

まちの情報を知ることも大事ですが、実際に現場を見たり肌で感じることはそれ以上に大事なことだと感じています。たとえ自宅にいたとしてもGoogleマップで見ることができてしまう時代ですが、まちを見るプロフェッショナルである入川さん、寺川さんのやりとりを側で体験しながら実際にまちを歩いてみることで、本質的なまちの見方や視点の尖らせ方を学ぶことができると思っています。ぜひ、まずはそれまでの自分の常識をいったんゼロにしてみて、新しい視点を得にLVLに参加してみてください。