INTERVIEWLOCAL VENTURE LABLVL OBOG 19.04.01

悩み抜いた半年間と生まれたつながりで、チームとプロジェクトが形になりました。

  • 第2期生

株式会社スイーツスタンダード 代表取締役・Chef

小澤 幹さん

1979年長野県松本市生まれ。19歳でパティシエの道へ進み、山陰地方の名店にて8年間研鑽を積む。その後、世界的パティシエのもと和スイーツブランド「和楽紅屋」や豆スイーツブランド「フェーヴ」などのスイーツブランドのほか、様々なスイーツの企画開発や製造責任者など10年間の経験を経て2018年株式会社スイーツスタンダードを創業。知育をテーマにした体験型デジタルテーマパーク「リトルプラネット」の「しゃべるARクッキー」をプロデュース。また同年8月、日本各地の魅力をスイーツを通して発信することを目指す「パティスリーmoa.」を東京都大田区にオープン。日本の素材を活かし、子供からお年寄りまで安心して楽しめる、優しい味わいのスイーツづくりをおこなう。

自分に足りない経験を持つメンター、
得られる繋がりに価値を感じました

LVLに応募した当時のお仕事を教えてください。また、どのようにLVLと出会われたのでしょうか?

当時はパティシエとして働きだしてから20年近くが経ち、独立して新しいあり方を確立したいと模索していたタイミングでした。

専門学校を卒業してから、最初は山陰地方にある地域密着型の有名パティスリーに就職したのですが、頑張りを認められ入社して3年目で一般的には8〜10年かかると言われるスーシェフ(最高責任者であるシェフパティシエの補佐)になることができ、年間1億円を売り上げる店舗を任され、そこでお店の回し方を5年間学びました。その後、最初のパティスリーでの8年間の経験を活かしながらパティシエとしての新しい可能性を探りたくて、当時他のパティシエとは違う独自の挑戦をしていたある有名パティシエのもとへ改めて修行にいくことに決めました。そこで和素材を中心としたブランドのブランディングや企画開発、製造責任者などを担当したことがきっかけとなり、日本の地域や独自の素材の素晴らしさを知っていったんです。そして同時に、世間一般に流通している土産菓子が地域の素材の魅力を活かしている商品がほとんどないということに気づいていき、これをどうにかできないものかと悶々と感じるようになっていきました。

また、職人として今後のAIの発達や生活スタイルの変化を考えたとき、自分たちの未来が不透明だと感じていて、そんなときに出会った「イノベーションはコラボレーションの中にある」という言葉からインスピレーションをもらい、日本の魅力とスイーツをコラボレーションさせたら何かが起きるのではないかと可能性を感じるようになりました。

このプランでTOKYO STARTUP GATEWAY(以下、TSG)という東京都が主催でETIC.が事務局をしているビジネスプランコンテストにエントリーしたところ、幸いセミファイナリストまで進むことができたのですが、審査が徐々に進む中で自分は商品企画開発やスイーツ事業のマネジメントは得意だけれど地域の抱えている課題や各地に眠る魅力はまだまだ知らないと感じたり、販売先の開拓経験が少ないなと課題を感じるようになったんです。そうしたとき、TSGの事務局からLVLという学びの場があると教えていただき参加を決めました。

LVLにどのようなことを期待して申し込みましたか

正直、参加費としては安くはないですよね。ただ、僕は地域商社のテーマラボを選択したのですが、メンターである株式会社四万十ドラマ代表取締役の畦地履正さんについての経歴を拝見したところまさしく今の自分に足りないと感じていた部分を中心に活動されてきた方でしたし、メンターだけでなくローカルベンチャー推進協議会やETIC.のリソースも活用させていただければきっと参加費以上の学びや繋がりが得られるだろうと感じたんです。

「地域をデザインする」という概念と出会った衝撃

どのような起業プランを考えていたのでしょうか

TSGの参加時から現在まで基本的なところは変わっていないのですが、全国各地に存在する、地域産品に限らない伝統や文化、人の営みなどの地域の魅力をスイーツを通して発信していくというのが企画の概要です。

自分が持つ商品開発、スイーツ事業全般のマネジメントの能力を活かしながら、スイーツで地域の魅力を発信したいという地域と一緒にスイーツ事業を全国各地で起こしていくイメージですね。ゴールに置いているのは、地域の魅力を発信するというところと、職人が活躍できる未来をつくるということです。

東急電鉄池上線の雪が谷大塚駅から徒歩3分。小澤さんが経営する、パティスリー moa.

四万十地栗とコラボしたモンブランは絶品。moa.のケーキは砂糖が一般的なケーキより控えめで食べやすく、それでいて生地が濃厚なので上品な味わいです

LVLで印象的だったことを教えてください

高知県四万十市でのフィールドワークのときに畦地さんに教えていただいた、「一点突破」と「デザイン」という考え方です。一点突破は四万十にとっては栗のことを指していて、デザインは四万十流域を中心として地域全体をデザインするという、四万十ドラマのデザイナーである梅原真さんの考え方です。

四万十でのフィールドワークの様子

四万十山栗の畑の様子を見学

特に「デザイン」の概念が変わった経験は印象的でした。端的に言えば、四万十で学んだ「デザイン」は、一次産業にデザインを加えるということだと思っています。一方でそれまでの自分の中でのデザインと言えば、パッケージや広告のデザインだったんですね。

梅原さんのそうしたデザインの捉え方は、フィールドワーク前にも資料を通して知ってはいましたが、実際に行ってはじめて納得できたことです。まさに百聞は一見に如かずの経験でした。例えば、栗を栽培する際に農薬を使うと四万十川に流れていってしまうので、農薬を使わずにいかにしていい栗を作るかというところで、選定技術を他地域から導入していい栗を作れるようになったということ自体がデザインなんですよね。さらに、読み終えた新聞紙からバックを作るという「しまんと新聞ばっぐ」の取り組みも、その内容は知識として知ってはいましたが、実際に四万十川を目の前にしてはじめてこの川を守るために自然に戻るものを使っていかないといけないと感じることができたんです。その全体像を体感して、四万十ドラマがしている四万十流域をデザインするということ、ひいては地域をデザインするということを理解することができました。

メンターやファシリテーター、同期生たちとはどのような関係性でしたか

参加時点で既にスイーツ事業をしていたこともあり、メンターの畦地さんにはご自身が主催されている全国の生産者さん、百貨店のバイヤーさんらが集まるネットワークに招待していただきました。そこからは非常に大きな繋がりを得られていて、本当にありがたいなと感じています。そうしたネットワーク以外にも、畦地さんには様々な方たちを個人的にもご紹介いただいています。

また、ファシリテーターで宮城県気仙沼市役所 産業再生戦略課の小松志大さんもこのプランに共感してくださっていて、LVL修了後に気仙沼スイーツを作るプロジェクトのお誘いをいただき現在地域の関係者の方たちと調整している最中です。

同期生たちとは今でも地域商社のメッセンジャーグループでそれぞれが発信したことに対してフィードバックし合えていて、これからもこの関係はずっと続いていくのではと感じています。とても心強く感じていますね。

自分に向き合い
悩み抜いた半年間があったからこそ
このプロジェクトが動き出した

LVLに参加前と参加後で、どのような変化がありましたか

プランをブラッシュアップできたのはもちろんですが、期待していた通り繋がりができてそこからチームメンバーを形成できたことが大きな変化でした。それぞれ自分の仕事は持っているメンバーと役割分担しながら相互作用的に動いていくチームで、全国の生産者さんとすでにご自身の食にまつわる事業をされている1期生や、一級建築士として材の地産地消を目指して活動されている同期生がチームメンバーとなっています。

また、これまでパッケージデザインなどの経験はありましたが、そこまで自分が担当してしまうと手がまわらないかもしれないと薄々気がついてきたとき、畦地さんに「お前は(一次産業からデザインする)デザイナーをつけないとダメだな」と言われたことをきっかけに、一点を絞り込みブランディングをしていくデザイナーとして梅原さんの元で働かれていたデザイナーさんを畦地さんに紹介していただきました。あとは元同僚にも商品開発や技術指導の面でメンバーとして参加してもらっています。

最初は個人で活動していくイメージだったのですが、LVLでの半年間を終えたとき、これまでに繋がってきた人たちとエキスパートとして協力し合ってチームを形成した方が効率的だなと思うようになったんです。そう思いはじめたらあとは早くて、LVL修了3か月後にはチームができていました。「修了直後の今でないと、中々メンバーが得られないな」というタイミングの見極めもありました。

店内で見つけた、「しゃべるARクッキー」。遊びが学びに変わる”体験型知育デジタルテーマパーク” を運営するLittle Planetとコラボした商品だそう

今挑戦している活動を教えてください

現在、あるクラウドファンディングチームと協働して、月替りで各地域のローカルスイーツを作り、同時にその地域の魅力を発信していくプロジェクトを画策中です。支援のリターンとしては、完成したローカルスイーツをお届けすることをイメージしています。今後スイーツスタンダードとしてメディアをつくり発信もしていきたいので、その最初のチャレンジという側面もありますね。OEM(Original Equipment Manufacturing)として将来的に地域へレシピ提供することや、ノウハウを伝えていくことも視野に入れています。

また、ローカルスイーツの作り手の人材育成として、こちらもクラウドファンディングとコラボしてゼミ生を募り、スイーツ事業のノウハウを教えていくプランを進めています。ゼミ生たちにローカルスイーツのプランを考えてもらい、集まった支援金で実行する仕組みができればと。すでにやる人がいる地域へノウハウを伝えていくことも、将来的にできたらいいなと思っています。

最終目標は、それらの活動が全国各地で起こっていったときに、ネットワークをつくり社会に仕掛けていければと考えているんです。例えば百貨店でローカルスイーツ展の催事を企画するなど、「ローカルスイーツ」というジャンルを盛り上げていきたいです。

これまで、事業をどうやってマネタイズするのかというところで試行錯誤してきました。自分ができることは限られているので、その中で何ができるかというところをLVLの半年間悩み抜いたからこそできた完成形です。LVL修了後に畦地さんを通して出会った方々によってよりスピード感も増したと感じています。

>>株式会社スイーツスタンダードのHPはこちら
パティスリーmoa.のインスタグラムはこちらから。

LVLに参加する方へメッセージ

日本各地で自分の地域には何もないと思っている人はとても多いと感じていますが、その土地には昔から住んでいる人たちの営みがあって、空気みたいに当たり前になっていることこそ、その地域の魅力に繋がっているんじゃないかと思っています。そうしたものをLVLを通して感じることができるようになると楽しいのかなと思います。 また、日本中課題だらけですが、課題を解決しようと思うと大変ですし疲れてしまいます。そうではなく、自分が何がやりたいのか、それに対して自分に何ができるのかを考えていくのが大事ではないかと僕自身は感じていて、それを見つけるための場としてLVLを活用してみるのもいいのではないでしょうか。