EVENT/REPORTLOCAL VENTURE LAB 20.02.03

痛快なローカルベンチャーが世界に評価されていく時代 〜『ソトコト』編集長・指出一正さん×NPO法人森の生活 代表理事・麻生 翼さん対談

先日、無事に終了したローカルベンチャーラボ(以下、LVL)3期デモデイ。一般公開された2日目に行われた、ソーシャル&エコ・マガジン『ソトコト』編集長・指出一正さんと土着型SDGsビジネステーマラボのファシリテーター・麻生 翼さん(NPO法人森の生活 代表理事)との対談をレポートします。

LVL1期では自然資本産業テーマラボのメンターでもあった指出さん。これまでの変遷を内と外から眺め、どのようなコミュニティとしてLVLが育ってきたのか、そして日本中のローカルベンチャーを取材する編集者としてローカルベンチャーの現在地を語ってくれました。

痛快なローカルベンチャーが世界で評価される時代

麻生さん(以下、麻生):本日は日本で一番ローカルベンチャーを追っていると言って過言ではない指出さんにゲストとしてお越しいただきました。指出さんは、最近ローカルベンチャーに感じられていることはありますでしょうか?

指出さん(以下、指出):そんな、恐縮です(笑)。でも、LVLにはすべてのビッデータが集まってきていますよね。僕はここがローカルベンチャーの本丸だと思っています。地域で新しいことをやりたい、地域が好きだと感じている方は、ぜひここに参画されるといいと思います。

僭越ながら僕自身も西粟倉の牧大介さん(エーゼロ株式会社 代表取締役)と1期で自然資本産業テーマラボのダブルメンターをやらせていただいて、当時のラボ生たちからもらった色紙は今でも編集部に飾ってあります。つらいとき、特に校了のときなんかにはそれを眺めて頑張っています(笑)。本当に、いいコミュニティに育っているんですよね。

『ソトコト』編集長・指出一正さん

麻生:3期は約70名のラボ生が集まり、1期からの全員を合わせると200名弱のコミュニティになってきています。一歩踏み出そうという意思で参加を決めた方や、既に踏み出してから参加された方もいますが、何億円規模の事業ではなくいわゆる“小商い”的な事業に取り組む人たちが集まっていますね。指出さんはLVLのこうした特徴をどう捉えられていますか?

指出:まず、日本はCOP25で2度目の化石賞をとりましたが、取らない日本に変えていった方がいいですよね。僕たちはこれをやれば諸外国が褒めてくれるということを追求した結果、CO2排出量がすごい国になってしまいました。一方で、特にここに集まる皆さんのような方々は、いま中山間地域にサステナブルデザインをちゃんと感じ取っている。これからは「このサステナブルデザインこそが本来の日本らしさだ」ということを伝えていけばいいのだと思っています。小さな粒でもそうした事業の誕生や発信が続けば、5〜10年でガラッと日本は変わります。日本における現在のA面があったとして、もう一つのA面がローカルベンチャーから生まれていけばいいのではと思うんですね。

麻生:もう一つのA面ですか。

指出:そうです。たとえばこれまで僕自身が出会ってきた各地のローカルベンチャーからは1匹10万円の金魚を養殖する、世界最大のドッランをつくる挑戦などが生まれていますが、皆さん痛快です。痛快なことをやって仕事になる世界に変わりつつありますから、皆さんの挑戦は「日本ってカッコイイ」というこの国の社会的・世界的評価に繋がっていくはずです。実は、小さなことの方がカッコイイんですよ。ローカルで小さく始めたことが世界に広がっていくと考えてもらえればいいのだと思います。

麻生:確かに、この数年間で“地域で痛快なことをする”ことが浸透してきた印象を受けますね。

土着型SDGsビジネステーマラボファシリテーター・麻生 翼さん

LVLは講師×生徒ではない、全員×全員で数万通りの可能性が生まれるコミュニティ

麻生:さて、本日のラボ生たちの発表はいかがでしたでしょうか?

指出:全部いいですよね。いま僕たちがモヤモヤしていることの理由、本質をすべて捉えてくれているので、皆さんが今の日本を体現してくれたと感じました。だからこそ、これらの事業がおもしろくなった先には最高の社会が待っているのではないでしょうか。シャドー・キャビネットではないですが、LVL内で環境大臣、厚労大臣らを任命してみてもおもしろいかもしれませんね。

麻生:LVLで一つの地域をつくったら、めちゃくちゃおもしろい地域ができそうですよね。

指出:模擬国連じゃなくて、模擬日本をやったらおもしろいですね。

麻生:僕も3年間LVLに関わらせていただいていますが、今年が一番ありとあらゆるテーマが重なって、未来の地域がここにあるなと眼前に迫ってきた感覚がありました。

指出:それはとても大事な視点ですね。僕は関係人口関連のコミュニティの監修を10団体以上やらせていただいているのですが、一番古いのが2012年からスタートした島根県と『ソトコト』がコラボレーションした地域づくりのための連続講座『しまコトアカデミー』です。東京で8年、関西で5年、そして今年から広島と島根県内の講座が始まり、域内関係人口を作ろうとしているのですが、今500名以上のコミュニティになっていて、メンターやファシリテーターから離れても、自然なかたちで起業が起きているんです。

LVLも1,2,3期というのは中学校1,2,3年生みたいなもので、すがすがしい先輩後輩のコミュニティができているから、たとえば麻生さん対ラボ生168名ではなく、メンターやファシリテーターや事務局、そしてOBOG全員同士の200×200で何かが起きる、つまり4万通りの可能性があるということなんですよね。LVL半年間のタイミングで何が完成するかではなく、そこで仲間になった人たちがどれくらい関係性を持続していくのかに鍵があり、そうした持続するコミュニティとなっているのがLVLなんじゃないかと思います。

麻生:メンバーも必ずしも起業を志しているわけではなく、行政の方がいらっしゃったり、サポーターがいらっしゃったり、会社の中で挑戦していたりと様々ですよね。

指出:そうなんですよね。たとえば企業の方にとっては社内ローカルベンチャーの挑戦になりますが、過去博報堂が子会社博報堂ケトルを生み出したことで企業から社内ベンチャーが生まれる流れが普通になったように、次は社内ローカルベンチャーの普通をぜひ作り出してほしいです。企業の本部は東京でも、ノウハウを活かして地方と関わっていく流れが生み出されればいいのではないでしょうか。実はこれが僕らが一番やりやすい関係人口の作り方なのではないかと思うんです。

問いかけてほしいのは「自分にとっての真ん中は何なのか?」ということ

指出:地域商社テーマラボのメンターである畦地さんがよく語ることですが、真ん中に軸があるのは最強だなと思うんです。僕は釣りが好きなので釣りをいつでも真ん中においていますが、まちづくりでもコーヒーでも、何でも自分にとって大切なものを真ん中に置いておけばいいと思うんですね。あとはその時々に流行っている要素を加えていけばいいんです。今日参加された皆さんは、「自分の真ん中って何なのか?」という問いを持ち帰っていただけたらいいのかなと思います。

麻生:本当にそれがキーワードですよね。今日の発表者の方々からも聞こえましたし、それぞれ真ん中を見直したからこそのアウトプットだったんだろうと感じています。

指出:それに、実は真ん中があったときのほうが、苦しいときに逃げやすいんですよ。逃げるべきときは逃げた方がいいんです。「負けるが勝ち」は僕の好きな言葉なのですが、ローカルベンチャーは弱い立ち位置から社会を変えていくという考え方なんですよね。ですから、皆さんのような弱さや綻びに魅力を感じる人たちは薄々感づいていると思うのですが、誰も空を飛べるわけではないし、強い繋がりの結束の固いコミュニティが皆が皆好きなのかというとそういうわけでもないし、関係人口という言葉もそこから生まれていて、程よい距離感の関係がいいよねという考え方なんですよね。そうしてつらいことや頭打ちのことがあって逃げても、真ん中があれば自分の大切なことはこれなんだと思い返すことができますから。

麻生:指出さんの話を聞いていて思い出したのは、畦地さんが「何かを始めるときには素でやりとりできる関係性が大切だ」と言っていて、確かに真ん中がはっきりすることで初めて周囲と繋がることができるなと思ったんですよね。そのとき、「真ん中」と「囚われ」は違っていて、色んな囚われていたものを剥がしていって残ったものが真ん中だと思うんです。

指出:そうですそうです。たとえば麻生さんは森と環境、教育という真ん中があって、現在の素敵な活動をされているのだと思うんです。ですから、真ん中を横に置いて違うことで頑張ろうという社会ではない方がいいんですよね。

未来のプレイヤーとの接点・接触率を意識したまちづくりを

麻生:それこそLVLは真ん中や素で付き合っているコミュニティだからこそ気持ちがいい場になっていますよね。

指出:そうですね。それに、明るい雰囲気の人が揃っているところがいいです。まちづくりで一番大事なのは、明るい雰囲気なんですね。気持ちがおもしろい人たちがまちを歩いていたら、まちづくりはほぼ成功なんです。まちに人が歩いてないから未来を描けなくなって、まちが沈んでいっているんですから。まちづくりをしたいという皆さんは東京にいる仲間を10人くらい地域に連れていって歩いてもらって、おばあちゃんたちに「まちが明るくなったね」と感じてもらえたらそれで十分一つの成果です。そうやって「コミュニティが楽しそうだな」と外から見ている人が中に入っていく求心力を維持する活動はぜひ続けてほしいですね。今の時代の“天岩戸作戦”じゃないですが。

実は、皆さんの活動を遠くから高校生や中学生も見ているんです。どこかのタイミングで入りたいなと思っています。そうした未来のプレイヤーとの接点・接触率をどう上げていくのかというのは重要なポイントで、今日のようなプレゼンテーションの場や、小さな取り組みを早めに起こすなど様々方法はあります。また、LVLのように人が集まっている/集まりやすいコミュニティは天性のものがあるので、ぜひ皆さんに未来のプレイヤーとの接点を増やし接触率を上げていってもらいたいです。

僕自身2008年にETIC.さんに声をかけていただいて、そのとき環境雑誌である『ソトコト』の一編集者に過ぎなかったのですが、『地域若者チャレンジ大賞』という長期実践型インターンシップ事例コンテストの審査員に入れていただいて、そこからスローダウンよりも地域でチャレンジする可能性やおもしろさを教えてもらい、ETIC.というコミュニティに育ててもらったと感じています。こうした人を育てる動きは、同じくLVLにも感じられますよね。単純に参加者が増え広がるだけでなく、人が育ち深さが生まれていくのがLVLコミュニティの特徴だなと感じます。

麻生:ファシリテーターだった人が受講生になったり、受講生だった人がファシリテーターになったりと、コミュニティは本当に年々変化していますよね。

指出:これは本当に大事な視点だと感じているのですが、その人の役職は途中途中変わっていいんですよね。プレイヤーがファシリテーターになり、ファシリテーターがプレイヤーになるような行ったり来たりできる流動性が保たれるコミュニティがLVLなのだと感じています。

 

 

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