エリアブランディングのためのバーチャル手法開発 〜withコロナ時代における新しいフィールドワークの形とは?

PROJECT

移動制限下でも、地域戦略のためのエリアブランディングを実現する技術・手法を開発する

ローカルベンチャー創出において、地域に足を運び現場にふれるフィールドワークは欠かせません。

とりわけエリアブランディングにおいては、現地のくらしを肌で感じ、その場に身を置くことで感じるまちの匂い、プロデュースのための着眼点や見立てが、その後のプランニング〜実行の鍵を握ります。

しかし、現在のようにリアルな現地訪問が極めて限定される状況下では、人の移動を最小限にとどめ、リスク管理を徹底しつつも、効果を生み出すフィールドワーク手法の開発が急務となっています。

本プロジェクトでは、以下のような手法・技術を用いて、全員が現地訪問に参加しない形式でのバーチャルフィールドワークの実験を行いました。

①ジンバル等を使った現地+リモートでのバーチャルFW運営
②アイトラッキング(目線検出)による、エリアマーケティング視点の指導システム
③AIカメラ技術などを使った、エリアの見立てと解釈のナレッジ構築
④5Gネットワークによる、より臨場感の高い体験
⑤上記をふまえたバーチャルフィールドワークのあり方・手法・事業的枠組み・可能性の整理

構成員は、メンターとして入川秀人さん、寺井元一さん(詳細はプロジェクトメンバープロフィール欄参照)、事務局として神奈川県茅ヶ崎市でコワーキングスペースチガラボを運営する清水謙さん、加えてローカルベンチャーラボ生が実施メンバーと技術メンバーに分かれて参加しました。

以下に、2020年ローカルベンチャーラボ4期においてチームが行った初年度の研究結果発表をレポートします。

MEMBER
入川スタイル&ホールディングス株式会社 代表取締役社長兼CEO
入川 秀人
1957年神戸生まれ。ダイエーグループにて新規出店業務に携わった後、1999年LDKを玉田敦士氏と、2001年コミュニティ&ストアーズ(現カフェカンパニー)を楠本修二郎氏と創業。2005年入川スタイル研究所を経て、2007年入川スタイル&ホールディングスを設立し、現在に至る。 東急東横線高架下のSUS、赤坂ARK HiLLS CAFEなど数多くのカフェを手掛けた他、商業施設としてはTSUTAYA TOKYO ROPPONGIやUT STORE HARAJUKUでGOOD DESIGN賞を、同じくUT STOREでDesign for Asia Grand Awardを受賞。近年は横浜市や川崎市など行政に関連したプロジェクトにも携わっている。 一方、青山学院大学感性ビジネス講座や東京経済大学、日本ショッピングセンター協会等で講師を務め、教育活動にも積極的。NPO法人ETIC東北震災復興ベンチャー企業のメンターも務める。 著書に『カフェが街をつくる』(2012年)がある。
株式会社まちづクリエイティブ代表取締役/アソシエーションデザインディレクター
寺井 元一
1977年生まれ。2002年、NPO法人KOMPOSITIONを設立。横浜・桜木町の壁画プロジェクト「桜木町 ON THE WALL」や、ナイキ社を協賛パートナーとする代々木公園でのストリートバスケ大会「ALLDAY」など、表現者に活動の場や機会を提供する活動を行う。ストリートアートからエクストリームスポーツまで、公共空間と民間活力を結びつける独自の企画を実現してきた。 2010年、クリエイティブパワーによる地方都市の活性・再生を実践すべく株式会社まちづクリエイティブを設立。自社のモデルケースとして千葉県・松戸駅前の極小エリアを「クリエイティブな自治区」にする、MAD Cityプロジェクトを開始。以降、同エリアにて原状回復不要や入居者コミュニティ支援などの特徴をもつ不動産サービスを軸に、150人以上のクリエイティブ層の誘致を実現。 その他、DIYでのリノベーションなど地場産業の創出にも取り組みながら、一方で松戸市の地域アートプロジェクト運営、町内会を主体とする住民自治組織「松戸まちづくり会議」の立ち上げに関わるなど、独自のエリアマネジメント事業を推し進めている。 現在ではMAD Cityのモデルをもとに、佐賀県武雄市をクライアントとした温泉街および保養地の活性化プロジェクト「TAKEO MABOROSHI TERMINAL」をはじめ、他地域でもプロジェクトを展開中。リノベーション、地域アートプロジェクト、クリエイティブシティ、空き家活用、住民コミュニティ支援、エリアブランディングなどを含んだ独自の知見を提供している。

INTERVIEW

地域を読み解くエリアブランディング

最初に、研究チームはエリアブランディングを以下のように定義します。

・地域を調べてその魅力を発信すること
・エリアのもつ”におい”や”未来”を予測し、言葉にして可視化すること
・そのエリアの人たちが、このまちはこうあるべきだ、と自信を持って言えるようにすること

そのうえで、なぜエリアブランディングがまちづくりに必要なのかについて、地域にあるべき産業(業種・業態)が分かるようになること、地域内での意見調整がスムーズになること、まちの匂いやまちの空気感が出てくるようになることだと語ります。

フィールドワークはエビデンスを集める手段

エリアブランディングでは、人口や地理、歴史、文化などの基本情報をもとに仮説をたて、フィールドワークで「人」と「店」と「町」を見極め、その仮説をアップデートさせていきます。

そのエリアがどのようなまちなのか、動かし難いエビデンスを集める手段としてフィールドワークは必要不可欠。

しかしながらその実践には、エリアを多面的に見る専門的な知見と豊富な経験が必要であると同時に、複数回のフィールドワークが必要になります。

そのためコロナ禍において、人の移動を最小限にとどめ、リスク管理を徹底しつつも効果を生み出すフィールドワーク手法の開発は急務であると、研究チームは提言します。

リサーチ&仮説検証はオンライン、フィールドワークはリアルとオンラインの融合

バーチャルフィールドワークの全体の流れは、以下の通り。

リサーチと仮説検証はオンラインで、フィールドワークもリアルとオンラインを組み合わせます。

 

バーチャルフィールドワークのオペレーションは、以下の通り。利用するツールはZOOMにGoogle Mapと、非常にシンプルです。

現地ガイドが仮説に基づいてカメラを片手にフィールドワーク、ZOOMでつながった全員でGoogle Mapを通して位置情報を確認しながら、メンターから場所の解釈を受けていきます。

 

映像記録になることで、複数回の確認、他専門家のさらなる検証も可能に

バーチャルフィールドワークを開発し、実践してみた研究チームは、初年度の発見について以下のようにまとめました。

【良い点:同時性や客観性】
・エリアを歩く側からフィールドの追加情報をリアルタイムで共有可能
・多くのメンバーが同じ情報を共有できることで、新たな発見がある
・位置情報やマップを共有し合うことで、エリアを歩く側も今いる場所の詳細を把握できる
・映像記録のため客観的な事実を確認できる。また繰り返し確認が可能となる
・映像を異なる多様な分野の専門家に見せて検証することも可能

【課題点:リモートとローカルの齟齬】
・エリアを歩く側の誘導がどうしても入る事がある。どこまで客観的になれるか
・画面の情報量が多いため、映すもの、見せるモノは明確に示す必要がある
・エリアを歩く側の発信の意図をオンライン上ではうまく汲み取れない場合がある
・カメラに映っている全てが見えているわけではない

バーチャルフィールドワークにより、より多くの人たちがエリアブランディングに参加し、エリアの魅力を客観的な事実に基づき発見・共有することができるようになると語る研究チーム。

また、リモートで参加している専門家によるアドバイスを受けることで、その地域を多角的な視点で見ることができるようになるとその魅力を語りました。

THOUGHT

LOCAL R&D CENTER への想い

オンラインが普通になった今こそ、安全で低コストなエリアブランディングを全国に提供していく

この10年、まちづくりに携わる人々の間では、都市計画の図面をもとにまちがゾーニングされても、そこに用途を指定しても、それだけでまちが変わることは難しいことが実感されてきました。

その結果生まれた、まちに入り込み実効性のあるプランを考案する「エリアブランディング」。

今後本プロジェクトでは、地方創生に力を注ぐ全国の地域とつながり、まちづくりの戦略やローカルベンチャーの基盤となる「このエリアならでは」を見つけていくエリアブランディングを、多くの地域に提供していけるようつながりを創出していきたいと考えています。

関連記事>https://drive.media/posts/22450