かまいし”シン・関係人口論”共創ラボ 〜釜石のこれまでとこれからを研究する

PROJECT

withコロナ時代における新しい関係人口の在り方を探る

2021年3月で東日本大震災から丸10年。岩手県釜石市では、震災から最初の5年間、ボランティアをはじめとする数多くの個人や企業が、復興のために活動し、支援者として地域と関わりを持ってきました。

その後の復興から創生に移るフェーズにおいては、釜石で自分のやりたいことに挑戦する人だけでなく、離れたところから釜石となんらかの関わりを持つ、いわゆる「関係人口」も多く生まれ、その関わり方も多様になっていきました。

このプロジェクトでは、釜石に関わり活動してきた個人や企業が、関わり方の時期や期間・目的等によって、釜石をどう捉えているのかを検証することで、withコロナ時代における「関係人口」という言葉にとらわれない釜石流の新たな関係性のあり方(新・関係人口論)を考えていきます。

以下、2020年ローカルベンチャーラボ4期においてチームが行った初年度の研究結果発表をレポートします。

MEMBER
株式会社パソナ東北創生 代表取締役社長
戸塚 絵梨子
早稲田大学教育学部卒業後、新卒で2009年株式会社パソナに入社。都内企業に向けた人材サービスの営業に従事。2011年の東日本大震災発生から被災地でのボラテ ィア活動に取り組む。2012年に休職し、NPO法人Etic.右腕派遣プログラムにより釜石市の一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校に入職。2013年にパソナに復職後、継続した地域との関わり方を模索するなかで社内起業制度を活用し、2015年にパソナ東北創生を岩手県釜石市に設立。都市と地域の関係性を見つめなおし、新たな生き方・働き方を創出することを目指して活動中。釜石と東京との2拠点生活5年目。
合同会社sofo代表社員
神脇 隼人
千葉県出身 1988年生まれ 早稲田大学政治経済学部卒業後、三井不動産レジデンシャルに入社、営業・マーケティング・ブランディングの業務に従事。 より自分らしい働き方やくらし方を求めている中、営業稼働店舗が0となった釜石大観音仲見世通り(岩手県)に出会い、「0」だからこその可能性を感じ、2018年釜石大観音仲見世通りのエリアマネジメント会社合同会社sofoを設立。まちづくりの第一歩となるsofo cafeのオープン、ゲストハウスのサブリースや定期的なマルシェの開催を通じ、市民のやりたいことをかなえる場に育ちつつあり、通り内で次のプロジェクトが動いているほか、周辺のホテルが再開予定となっている。 地域や土地の想い・文化を丁寧に編みながら、地域に根付いた活動を続けている。

INTERVIEW

過去の施策整理、関係人口へのインタビュー調査を実施

震災後10年、地域外の人たちが釜石を訪れる理由が薄れていくなかで、今後の関係人口創出を考えるにあたり

1)時期によって関わる人、関わり方、モチベーションが違うのか
2)その違いによって現在もつながり続けているかどうかに変化はあるのか

という2つの問い、そして仮説として震災後10年間を以下のような前中後期に分類し(釜石市復興計画の考え方を引用)、関わりを持った時期や役割によって現在の釜石との関わり方に差異が生まれるのではないかと研究をスタートしました。

 

外の人がまちに関わる余白を作り出してきた10年間

研究プロセスは半年間、全6回。すべてZOOMを使用したオンラインで、関係人口4名に釜石での活動内容とその背景についてのインタビューを行い、これまでの釜石市の施作整理を実施しました。

プロジェクトオーナーの戸塚さん、神脇さん自身も釜石の関係人口であり、戸塚さんは初期の2012〜2013年にETIC.の右腕プログラムで釜石に関わり、その後いったん東京に戻るも、2015年からパソナ東北創生という社内ベンチャーを立ち上げ、現在も釜石で活動しています。神脇さんは後期の2018年に釜石大観音仲見世通りを活動拠点にしたエリアマネジメント会社合同会社sofoを設立されました。

インタビューゲストは以下の通り。初期〜後期まで、現在も釜石に在住の人から東京で働く人まで様々です。

 

これまで釜石は、以下図表4のように外部人材がまちに関わる余白を意図的に作り出してきています。そのため釜石には、一定期間在住し活動していたアルムナイが多く存在しています。

 

関係人口の要素を細分化、オリジナルのマトリクスを作成

インタビュー前は、釜石での活動の長さや経験の濃さがその後の関係性に影響しているのではないか、関わった時期によってまちへの思い入れの強さが違うのではないかと考えていたものの、実際はどの人もそれぞれ強い思い入れをまちに抱いており、現在の釜石との関係への関連性は見出せませんでした。

そこで、次は関係人口をより細分化することに。

1)個人か企業なのか
2)役割・仕事か想いなのか

に分けて、以下のような関係人口マトリクスを作成しました。

 

その上でさらに、

1)その後関係人口になったきっかけ
2)関係人口になった後に変化した役割、または想い

これらの視点からその人物がマトリクス上を移行、もしくは複合化しているのかを分析。

この一人の人間のマトリクス上での変化が、まちにとの関係性がより強く育っていく、つながり続けていく鍵になるのではないかと考えました。

マトリクス上での拡大や複合が、関係人口の持続にとって重要なファクターに

また、このマトリクスを用いて現時点での鍵となるケースを以下の図のように分類。

 

一般的に語られる関係人口は図のマトリクス左下の枠内にあたるとして、釜石市がこの10年間外部人材がまちに関わる余白づくりをしてきた結果、右下や左上の枠、その結果として右上が存在するのではないかという分析に至りました。

また、それぞれの分類について、以下の図のように整理。

 

年月を経て変化していく関係人口の役割や想いに対して、変化した後も役割が持てるかどうか、想いを持ち続けられるかどうか、個人から企業へ移行できるかなど、拡大や複合化が関係の持続性にとって重要なファクターになるのではないかと分析しました。

創る、つながる、育み続けるフェーズそれぞれのフォローが鍵

最後に、成功事例として

1)個人の想いを持って関わり、そこから仕事に発展したケース
2)企業のCSRとしての関わりから、担当者個人がまちに関わるようになったケース
3)地域おこし企業人としての関わりから、会社の事業を通しての関わりに変化したケース

を紹介。これらのケースをもとに、withコロナ時代の関係人口創出において重要だと思われる3つのポイントを、以下のように整理しました。

 

THOUGHT

LOCAL R&D CENTER への想い

マトリクス上の移行や複合化の事例を深掘りしていく

これまで「つくること」にフォーカスが当てられてきた関係人口。

しかし、まずは地域に招いて魅力を体感してもらうということが通用しなくなった今、「つくる」「育む」「つながり続ける」という3つのフェーズを意識することが重要なのではないかと研究チームは考えます。

適切なターゲットを認識し、訴求していくこと。「あの人にまた会いたい」と思わせるつながりを育み、地域で活躍し成功体験をつくることができる機会を設けていくこと。関わり方の多様性を生み出していくこと、OBOGコミュニティなどの居場所を作ることが、地域の関係人口創出の鍵になると研究チームは提言します。

今後は、

1)マトリクス上の移行や複合化の事例を深掘りしていく研究をし、白書にまとめる
2)関わりしろを可視化したwebサイトでの情報発信・マッチング
3)関係人口に関するイベント・セミナーを実施

を目指していく予定とのこと。関心を持っていただけた方・企業・地域がいらっしゃるならば、ぜひ事務局までご連絡ください。

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